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飲食業界における施設内飲食スペース設計とは?

飲食の分野における施設内飲食スペース設計(しせつないいんしょくスペースせっけい、In‐House Dining Space Design、Conception d’espaces de restauration internes)とは、商業施設やオフィスビル、病院、学校、テーマパークなどの建築物内部において、来店客や利用者が快適に飲食を楽しめる空間を計画・デザインする業務を指します。店舗のレイアウトだけでなく、通路や動線、客席配置、家具・照明・音響計画、インテリア素材の選定、空調・換気・照明強度のバランス、さらには視線の抜け感やプライバシー確保といった心理的配慮まで多岐にわたる要素を統合的に検討します。特に昨今は、新型感染症対策として最低限の人流制御や非接触オペレーション、自然換気の導入が求められる一方で、顧客体験価値を高める演出としてデジタルサイネージやアートを活用した空間演出、ローカルフード体験を重視した演出が注目されています。これらを実現するために、設計者・施工者・設備業者・店舗運営者が連携し、企画段階から運用までを見据えた綿密なプランニングと現場フォローを行う点が特徴です。



歴史的背景と発展

飲食スペースの設計は、戦後の高度経済成長期に百貨店の屋上レストランやショッピングセンター内フードコートの登場によって始まりました。当時は大量集客を目的とし、座席数確保が最優先でしたが、1990年代以降、ライフスタイルの多様化とともに、滞在時間を延ばすための居心地向上やブランドイメージ演出が重視されるようになりました。その後、2000年代にはデザイナーズカフェやコンセプトレストランが流行し、インテリアの美術性や物語性が飲食空間設計の主流となりました。

さらに、2010年代に入ると、健康志向やエシカル消費の高まりを受け、植物由来の内装素材や自然光を活かす設計、地域文化を反映したローカルデザインが脚光を浴び、設計の社会的役割が拡大しています。



設計原理と主要要素

施設内飲食スペース設計では、まず来店客の導入動線と退店動線を整理し、動線設計を明確化します。入口から受付・注文カウンター、客席、会計、退店口までの流れをスムーズにし、混雑ポイントを回避することでストレスを軽減します。同時に、客席配置ではテーブル間隔や向き、可動式パーティションの配置を工夫し、プライバシーとコミュニケーションの両立を図ります。

また、照明計画では、自然光と人工照明のバランスを取り、昼夜問わず快適な明るさを維持。音響設計では、吸音パネルやBGM選定によって会話のしやすさや店内の雰囲気を演出します。家具・什器は耐久性・清掃性に加え、ブランドコンセプトに合ったデザインを選択し、空間全体の統一感を持たせます。



現代のトレンドと課題

新型感染症対策として、非接触オペレーションの導入が急務となり、セルフオーダー端末やモバイルオーダー、キャッシュレス決済の設置が広がっています。また、換気のしやすい窓配置や高性能空気清浄機の据え付け、アクリルパネルによる飛沫防止対策が常態化しています。

一方で、テレワーク普及による「ワークプレイスとしての飲食スペース」需要の高まりや、サステナビリティ観点からの廃材リサイクル素材利用、再利用可能什器の採用など、新たな設計要件が増えています。これらを柔軟に取り込むため、設計段階から運用・メンテナンス負荷を最小化する“一体化設計”が求められています。



まとめ

施設内飲食スペース設計は、動線や客席配置、照明・音響、非接触技術など多岐にわたる要素を総合的に統合し、快適性と安全性、ブランド体験を両立させる重要な業務です。今後は、デジタル技術やサステナブル素材の活用、新たな生活様式への対応といったトレンドを踏まえ、運用フェーズまで見据えた設計がさらに重要となるでしょう。

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