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飲食業界におけるクラフトチョコレートとは?

飲食の分野におけるクラフトチョコレート(くらふとちょこれーと、Craft Chocolate、Chocolat Artisanal)は、カカオ豆の選定から焙煎、精錬、成型に至るすべての工程を職人が一貫して手がける、小規模かつ丁寧な製法によって作られるチョコレートのことを指します。一般的な大量生産型チョコレートとは異なり、カカオの品種や産地、発酵状態といった原料の違いを重視し、作り手の哲学や表現が色濃く反映されるのが最大の特徴です。

フランス語では「chocolat artisanal(ショコラ・アルティザナル)」と表現され、“artisan(職人)”の精神を象徴するこの言葉は、単なる甘味料としてのチョコレートではなく、「食文化」や「芸術性」を備えた食品としての位置づけを意味します。クラフトチョコレートは単なるスイーツという枠を超えて、生産地との共生、食の透明性、サステナビリティを体現する存在でもあります。

現在の飲食業界において、クラフトチョコレートはデザートメニューやコース料理の締めに使用されるほか、ドリンクとのペアリング、ギフト商品、イベントやポップアップショップでの提供など、多様なシーンで活用されています。また、ビーントゥバー(Bean to Bar)という製法スタイルが一般的で、農園からカカオ豆を仕入れ、焙煎・粉砕・コンチング・テンパリングといった製造工程を全て自社で担うスタイルが主流です。

こうしたクラフトチョコレートの登場により、チョコレートは“誰もが同じ味を楽しむ”時代から“作り手と産地の個性を味わう”時代へと進化を遂げました。グルメ市場や高級スイーツ分野でも需要が高まっており、クラフトチョコレートは今や新たなチョコレート文化の中心的存在として認知されています。



クラフトチョコレートの歴史と由来

チョコレートの原料であるカカオは、紀元前から中南米のマヤ・アステカ文明において「神の食べ物」として神聖視され、飲料として使用されてきました。16世紀にヨーロッパに伝来し、やがて砂糖やミルクと組み合わされて現在のような「食べるチョコレート」が生まれます。

しかし、20世紀に入ると工業化が進み、コスト効率を重視した大量生産型のチョコレートが市場を席巻。風味の個性や原料へのこだわりは二の次となり、チョコレートは画一化されていきました。

その流れに対抗する形で誕生したのがクラフトチョコレートです。2000年代初頭、アメリカ・カリフォルニアを中心に、数人規模の職人が始めた「ビーントゥバー」ムーブメントがその源流とされます。これにより、カカオ豆本来の個性を活かす製造スタイルが再評価され、ヨーロッパ、アジア、南米へと波及しました。

日本でも2010年代以降にビーントゥバー文化が広がり、東京・京都・福岡などを中心に、小規模なクラフトチョコレート工房が多数誕生しています。国内産カカオの栽培も沖縄や小笠原諸島で始まり、“日本発”のクラフトチョコレートブランドも世界に進出するようになりました。



クラフトチョコレートの製法と特徴

クラフトチョコレートの最も重要な特徴は、カカオ豆の品質と職人技によって味が決まるという点です。量産品では使用されないような希少なカカオ品種や単一農園(シングルオリジン)にこだわり、豆ごとの発酵具合や収穫時期、焙煎温度を調整することで、唯一無二の味わいを生み出します。

製造工程は以下のように構成されます:

  • カカオ豆の選定:農園ごとの収穫ロットを吟味し、味と香りのポテンシャルを確認。
  • 焙煎:豆の特性に応じて温度と時間を調整し、香味を最大限に引き出す。
  • ウィノウイング:焙煎後の豆の皮を除去し、ニブのみを取り出す。
  • グラインディング・コンチング:カカオニブをペースト状にし、なめらかな食感と香りを整える。
  • テンパリング:結晶構造を安定させることで、美しいツヤと口どけを実現。
  • 成型・包装:板チョコレートやボンボンショコラに加工し、個性的なパッケージで販売。

また、クラフトチョコレートでは素材の純度が重視され、添加物は最小限に抑えられます。例えば、白砂糖ではなくココナッツシュガーやきび糖、乳製品不使用のヴィーガン対応製品なども一般的です。

このようなクラフトチョコレートは、テロワール(風土)や生産者の思想が味に反映されるため、まるでワインのような奥深さがあると評され、“食べる芸術”として評価されています。



飲食業界におけるクラフトチョコレートの活用と展望

クラフトチョコレートは、飲食業界において素材・演出・価値訴求の面から大きな注目を集めています。特に以下のような活用方法があります。

  • レストランやパティスリー:デザートコースやショコラアソートの主役として使用。
  • カフェやバー:カカオの香りを活かしたドリンクメニュー(ホットチョコレート、カカオニブラテなど)に展開。
  • ペアリング:ワイン、日本酒、ウイスキー、クラフトビールとの相性を活かしたマリアージュ提案。
  • ギフト・物販:ブランドストーリーを語れる高価格帯商品としてバレンタインや記念日に人気。

また、サステナブルなチョコレートとして、フェアトレードやオーガニック認証を受けた製品も増えており、環境や人権に配慮したブランド作りに貢献しています。近年ではカカオ農園との直接契約(ダイレクトトレード)を行うブランドも増え、透明性とトレーサビリティが重要視されるようになっています。

今後はAIによる味覚設計や、発酵工程の精密制御、NFTによるチョコレートの限定販売など、テクノロジーと融合した次世代クラフトチョコレートの展開も期待されています。



まとめ

クラフトチョコレートは、素材・技術・思想が融合した“食べるアート”として、飲食業界に新たな価値をもたらしています。

その魅力は単なる味覚にとどまらず、生産者とのつながり、作り手の哲学、そして持続可能な未来への貢献にまで広がっています。今後もクラフトチョコレートは、飲食体験の深化とともに、世界中の食卓と文化の架け橋となる存在として成長していくことでしょう。

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