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飲食業界におけるクラフトハニーとは?

飲食の分野におけるクラフトハニー(くらふとはにー、Craft Honey、Miel Artisanal)は、蜂蜜の生産工程において自然環境・養蜂手法・蜜源植物にこだわり、職人や小規模生産者によって丁寧に作られる高品質な蜂蜜を指します。工業的な大量生産によって作られる加熱処理済みやブレンド蜂蜜とは異なり、クラフトハニーは非加熱・無添加・単花蜜など、蜂蜜本来の風味と栄養価を最大限に引き出す製法が特徴です。

フランス語では「miel artisanal(ミエル・アルティザナル)」と表現され、「アルティザナル=職人による手作業」という意味が込められています。これはチーズやワイン、チョコレートといった他のクラフト食品と同様、地域や季節、蜜源の個性を重視し、“味の表情”や“背景のストーリー”が評価される製品ジャンルです。

クラフトハニーは、ミツバチの飼育方法や採蜜方法、蜜源植物の選定に至るまで生産者の哲学が反映される食品であり、都市養蜂やオーガニック認証などとも親和性が高く、サステナブルな取り組みの一環としても注目されています。味わいは採蜜地域・時期・花の種類によって大きく異なり、繊細で芳醇な香りや濃厚なコク、すっきりした甘みなど、まさに“自然がつくる味のアート”といえるでしょう。

現在、飲食業界ではこのクラフトハニーをスイーツ、ドリンク、チーズとのペアリング、料理の隠し味などとして多用する動きが広がっており、地域発信型の商品やストーリー性のあるメニュー開発において欠かせない存在となっています。



クラフトハニーの歴史と背景

蜂蜜は人類が古来から親しんできた天然の甘味料であり、その歴史は紀元前7000年のスペイン・バレンシアに描かれた洞窟壁画にも見られるほど古いものです。古代エジプトやギリシャでは神聖な食材とされ、医薬や供物としても用いられてきました。

19世紀以降、近代的な養蜂技術の発達により大量生産が可能となったことで、蜂蜜は広く普及しましたが、その過程で加熱処理や糖類混合などが行われ、蜂蜜本来の栄養や風味が損なわれるケースも増えました。

こうした背景を受け、21世紀に入ってから「蜂蜜の原点に戻る」動きとして注目されたのがクラフトハニーの潮流です。ヨーロッパや北米では“アーバンビーキーピング(都市型養蜂)”のブームとともに、小規模で自然との共生を目指す養蜂家たちが増加。日本でも2009年頃から東京・銀座や渋谷、大阪などの都市部で都市養蜂プロジェクトが始動し、地元産蜂蜜を活用した飲食メニューが続々と誕生しました。

クラフトチーズやクラフトビールと同様に、地域性と個性を重視した蜂蜜としてのクラフトハニーは、今や“作る蜂蜜”から“語れる蜂蜜”へと進化を遂げています。



クラフトハニーの製法と特徴

クラフトハニーの製法には以下のようなこだわりが見られます。

  • 非加熱処理:加熱による酵素やビタミンの失活を避け、自然の栄養を保持。
  • 単花蜜・単一採取:アカシア・レンゲ・マヌカなど特定の花から採取された“テロワール”のある蜂蜜。
  • ろ過の最小化:香り成分や花粉を多く含んだまま瓶詰めするナチュラル製法。
  • 地域蜜源の活用:都市養蜂や山間部での養蜂など、土地の個性を活かす。

また、クラフトハニーは“自然環境の味覚化”ともいえる存在であり、同じ種類の花でも気候や土壌によって風味が異なるため、ワインのように「ヴィンテージ(採蜜年)」を表示する製品も存在します。

蜂蜜は糖度が非常に高く腐敗しにくい特性があるため、保存料を必要とせず、グルテンフリー・乳製品不使用などの制限食にも対応可能です。そのため、健康志向や自然食志向の人々にとって理想的な甘味料として位置付けられています。

中には、ハーブやナッツ、スパイスを加えたフレーバードハニーや、みつばち保護の取り組みと連携したエシカル・ハニーなども登場しており、味覚・社会性・物語性を兼ね備えた新たな食のカテゴリを形成しています。



飲食業界におけるクラフトハニーの活用と可能性

クラフトハニーは飲食業界において、原材料としての機能性商品価値としてのストーリー性の両面から高く評価されています。具体的には以下のようなシーンで利用が拡大しています。

  • スイーツ:ジェラート、チーズケーキ、タルトなどに使用され、深みのある甘みと香りを演出。
  • ドリンク:ハニーミルクラテ、カクテル、フレーバーティーなどに加え、素材感を活かしたメニュー展開。
  • サラダ・肉料理:ドレッシングやマリネソースに活用され、酸味や塩味とのバランスが際立つ。
  • チーズとのペアリング:特にゴルゴンゾーラやシェーブルチーズと相性が良く、プレートのアクセントとして利用。

加えて、クラフトハニーを使用した商品は、“地産地消”や“フードマイレージ削減”といったサステナビリティの文脈でもアピールしやすく、エシカルなブランド展開を目指す飲食店にとっても重要なパートナーとなっています。

特にフェアやイベントでは「テイスティングセット」「蜜源マップ付きギフト」などが人気を博し、食と体験を結びつけるアイテムとしての活躍も目立ちます。今後はARやブロックチェーン技術を用いたトレーサビリティ表示の導入も進み、「どこで、誰が、どのように作ったのか」が可視化される時代に突入していくと考えられます。



まとめ

クラフトハニーは、自然の恵みと作り手の哲学が融合した“食べる物語”として、飲食業界で確固たる地位を築きつつあります。

素材本来の味や香りを最大限に活かし、環境や地域との共生を表現するこの蜂蜜は、単なる調味料を超えて、料理・飲料・スイーツの可能性を広げる存在となっています。クラフトハニーはこれからの“価値ある食”を体現するアイテムとして、さらなる広がりを見せていくことでしょう。

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