アパレル業界におけるOTB(Open To Buy)とは?
アパレル業界の分野におけるOTB(Open To Buy)(おーてぃーびー、Open To Buy、Ouvert ? l'achat)は、特定の期間内に商品を仕入れるために使える予算を指す用語で、在庫計画や販売予測に基づいて算出される購買可能枠のことを意味します。バイヤーやマーチャンダイザーが仕入れ判断を下すための数値的な指標であり、在庫過多や欠品のリスクを最小限に抑えるために活用されます。
アパレル業界では、OTBはシーズンごとの販売計画や在庫回転率に直結する要素であり、的確な商品補充・仕入時期の決定に不可欠な管理手法です。特にリアルタイムで売上と在庫を可視化しながら、柔軟に対応できるOTB管理体制は、変化の激しいファッション業界において企業の競争力を左右する重要な指標となっています。
OTBの定義とアパレル業界での役割
OTBとは、「Open To Buy」の略であり、バイヤーが一定期間内に仕入れ可能な予算額を表す概念です。販売計画、在庫状況、売上予測に基づいて算出され、店舗やブランドにとって適切な商品供給を維持するための基礎となります。
OTBは、次のような基本式で表されます。
OTB=(計画売上+期末在庫目標)?(期首在庫+現在の発注額)
この計算によって導き出される数値は、「まだ何を、どれだけ、仕入れる余地があるか」を示すため、過剰在庫や欠品を回避する戦略的な指標として使用されます。特にシーズン途中にトレンドや売れ筋商品が変化した場合、迅速にOTB枠を活用することで柔軟な補充発注が可能となります。
OTBは、マーチャンダイジング戦略における調整機能として、在庫コントロールやキャッシュフロー管理とも密接に関連しています。
OTBの語源と導入の歴史
OTBという概念は、もともとアメリカのリテール業界で確立されたマーチャンダイジング用語であり、20世紀初頭の百貨店経営において、仕入れ過多による在庫ロスを防ぐために導入されました。
日本においては、1980年代以降、アパレル業界で計画仕入れ・販売管理の重要性が高まり、アメリカ型のマーチャンダイジング手法が導入される中で、OTBの考え方が徐々に浸透していきました。特にSPA(製造小売一体型)企業が成長するにつれて、より緻密な在庫・仕入計画が求められるようになり、OTBは業務オペレーションの中核指標として定着しました。
また、2000年代以降のPOSデータの普及とITシステムの進化により、売上実績とリアルタイムで連動したOTB管理が可能となり、分析・判断の精度も格段に向上しています。
現代のアパレル業界におけるOTBの実務と展望
現在のアパレル業界においてOTBは、バイヤーやMDにとって欠かせない管理指標となっており、年間・シーズン・月単位で綿密に設定・運用されています。特に多店舗展開を行うチェーンストアでは、各店舗ごとにOTBを細分化し、地域特性や売上傾向を加味した仕入戦略が立案されています。
また、OTBはファッション性の高い商品やトレンド変動の激しいカテゴリーにおいて、柔軟な商品補充を可能にする「追加枠」としても運用されており、機動的な商品展開の鍵を握っています。
近年では、AIを活用した需要予測ツールや、クラウド型在庫管理システムと連動させたOTB管理が進んでおり、精度とスピードの両面で高度化が図られています。さらに、余剰在庫を抱えないサステナブル経営の一環としても、OTBの徹底管理は不可欠とされており、今後もその重要性は高まっていくと考えられます。
まとめ
OTB(Open To Buy)とは、アパレル業界における「仕入れ可能枠」を意味する管理指標であり、在庫と売上のバランスを保つために不可欠な要素です。
販売予測や在庫戦略と連動するOTB管理は、欠品の防止、過剰在庫の削減、キャッシュフローの健全化に寄与し、バイヤー・MDの業務効率と成果を左右する重要な役割を果たします。
変化の激しい現代のファッションビジネスにおいて、OTBは単なる予算管理を超えて、戦略的経営の中核指標として今後も発展していくでしょう。