アパレル業界におけるPコートとは?

アパレル業界の分野におけるPコート(ぴーこーと、Pea Coat、Caban marin)は、厚手のウール生地を使用したダブルブレストのショート丈コートであり、元々は欧米の海軍制服として着用されていた防寒用アウターです。広めのラペルと大きなボタンが特徴で、防風・防寒性能に優れながらもスマートなシルエットを保ち、現在ではカジュアルからビジネスまで幅広いシーンで活用されています。

「Pコート」という名称は英語の「Pea Jacket」に由来し、特に日本では秋冬シーズンに欠かせない定番アイテムとして浸透しています。性別・年齢を問わず人気が高く、ユニセックスで展開されることも多く、近年では素材やカッティングに多様性が生まれ、ファッション性を追求したモデルも多く登場しています。



Pコートの定義とデザインの特徴

Pコートとは、通常は厚手のメルトンウールで仕立てられた短丈のダブルブレストコートであり、左右対称に配された大きめのボタン、広めの襟(ラペル)、縦に入ったポケットなどを備えた構造が特徴です。多くのモデルでは、ボタンには碇(いかり)などのモチーフが刻まれ、海軍由来のデザイン性が残されています。

丈はヒップが隠れる程度のショートからミドル丈が主流で、動きやすさと防寒性のバランスが取れた設計となっています。袖口や背面にベルトやタブが付属することもあり、ミリタリーテイストとクラシック感が共存するのがPコートの魅力です。

色は伝統的なネイビーが多く見られますが、近年ではブラック、グレー、キャメル、チェック柄などのバリエーションも増え、個性を演出するアイテムとしても注目されています。



Pコートの由来と歴史的背景

Pコートの起源は19世紀のヨーロッパに遡り、特にイギリスやオランダの海軍で寒冷地用の作業服として使用された「ピージャケット(Pea Jacket)」が原型とされています。「Pea」は厚手の毛織物「P-cloth(ピークロス)」に由来するとされており、のちにアメリカ海軍にも採用され、20世紀初頭には標準制服として定着しました。

このコートは、甲板上の強風と寒さから水兵を守るために設計されており、風を防ぐための重厚な生地と、前面を2重に重ねるダブルブレスト仕様が採用されました。船上での活動を考慮した短めの丈や、手袋をしたままでも使える大きなボタンなど、機能美に基づいたディテールが多く残されています。

第二次世界大戦後には、軍服の民間転用が進む中でファッションアイテムとして再評価され、アメリカやヨーロッパの学生を中心に流行。その後、日本でも1960年代から70年代にかけて学生服やカジュアルコートとして広まり、定番化していきました。



現代におけるPコートの展開とファッション的価値

現在のアパレル業界では、Pコートはクラシックなアウターとして多くのブランドが展開しており、定番のミリタリーデザインに加え、シルエットや素材、ディテールをアップデートしたバリエーションが豊富に見られます。

とくにオーバーサイズ化やドロップショルダーのトレンドに合わせたリラックス感のあるデザインや、カシミヤ混やフェイクウールなど新素材を用いたライトウエイトモデルが登場し、カジュアルシーンだけでなく、通勤・通学・デートなど幅広い場面に適応しています。

また、ジェンダーレスやエイジレスファッションの流れにより、メンズ・レディースの境界を超えたユニセックスモデルも増加しています。防寒性や耐久性だけでなく、品のある印象やスタイリングのしやすさから、トレンドに左右されにくい「長く着られるアウター」として評価される傾向が強まっています。

ファッション感度の高い層では、古着のミリタリーPコートをヴィンテージアイテムとして楽しむスタイルも人気があり、サステナブルな視点からの再注目も見られます。



まとめ

Pコートとは、海軍制服として誕生したショート丈のダブルブレストコートであり、厚手のウール生地や大きなボタン、広い襟といった特徴を持つアウターです。

19世紀の軍用服にルーツを持ちながらも、現代ではその機能性とデザイン性を活かし、ビジネスからカジュアルまで多様なシーンに対応するファッションアイテムとして定着しています。

トレンドを取り入れつつもクラシックな魅力を持つPコートは、今後も変化するライフスタイルやファッション観に合わせて進化を続けることでしょう。

▶アパレル業界用語辞典TOPへ戻る

↑ページの上部へ戻る

ビジプリの印刷商品

ビジプリの関連サービス