アパレル業界におけるデザイン画とは?
アパレル業界の分野におけるデザイン画(でざいんが、Fashion Sketch、Croquis de mode)とは、ファッションデザイナーが衣服の構想を視覚的に表現するために描く図面のことを指します。人体のシルエットに服を描き込むことで、素材感やシルエット、ディテールなどのイメージを共有する役割を果たします。企画・設計・プレゼンテーションの過程で用いられる重要な工程であり、アナログからデジタルまで表現手法は多様化しています。
デザイン画の定義と役割
デザイン画とは、ファッションにおけるアイデアやコンセプトを視覚化し、衣服の構造・形状・素材・色彩などの要素を表現するために描かれる図像です。一般的には、人体のプロポーションをベースとした「クロッキー」と呼ばれる下絵に対して衣服を描き込み、完成形のイメージを明確に伝えることを目的としています。
デザイン画は、デザイナーの発想を社内のパタンナーや縫製スタッフに伝えるためのツールとしてだけでなく、クライアントやバイヤー、メディアに対するプレゼンテーション手段としても活用されます。そのため、単なるイラストではなく、実際に制作される服を前提とした実用的な情報が含まれる点が重要です。
語源と歴史的背景
デザイン画という言葉は「design(設計・意匠)」と「画(絵・図)」を組み合わせた和製表現であり、英語では「fashion sketch」または「fashion illustration」、フランス語では「croquis de mode」と呼ばれます。
デザイン画の起源は19世紀のフランスにさかのぼり、オートクチュール文化の中で顧客にデザイン案を提示する手段として用いられるようになりました。パリのファッションハウスでは、手描きのイラストをまとめたルックブックを通じて、上流階級の顧客に服を提案していました。20世紀初頭には、雑誌やカタログでもファッションイラストが広く用いられ、視覚を通じたデザイン伝達が一般的な手法として確立されました。
第二次世界大戦後は写真技術の普及によって一時的にファッションイラストの存在感は薄れましたが、デザイン画自体はアパレルの製作プロセスにおいて不可欠なものとして引き続き重用され、現在では手描きと並行してデジタルによる表現も定着しています。
現代における使用実態と多様化
現代のアパレル業界において、デザイン画は単なる下絵にとどまらず、ブランドコンセプトやコレクションテーマを表現するための重要なビジュアルツールとなっています。ファッション教育の現場では、デザイン画の描画技術や表現力が重視されており、クリエイティブと論理性を融合させる力が求められます。
また、近年ではiPadやタブレットを用いたデジタルスケッチが普及し、描画のスピードや修正のしやすさ、色彩調整の柔軟性が飛躍的に向上しています。Adobe IllustratorやProcreateなどのソフトウェアを使い、デザイン画をそのままパターンや仕様書に展開する工程も一般化しています。
加えて、SNSやポートフォリオサイトなどでの発信を前提とした作品づくりも広まり、アート性やストーリーテリングの要素を取り入れたデザイン画が評価される機会も増えています。
まとめ
デザイン画は、ファッションデザインの起点となる視覚的表現手段として、業界内で不可欠な存在です。伝統的な手描きの手法から最新のデジタルツールまで、そのスタイルや目的は多様化しており、今後も創造性と技術力を結びつける中核的な役割を担い続けるでしょう。