アパレル業界におけるトレンチコートとは?
アパレル業界の分野におけるトレンチコート(とれんちこーと、Trench Coat、Trench)とは、防水性と耐久性を兼ね備えたミリタリー由来のロングコートであり、ウエストベルトやダブルブレスト、エポーレット(肩章)、ストームフラップなどの特徴的なディテールを持つアウターウェアです。元々は第一次世界大戦時の塹壕(トレンチ)戦において兵士が着用した軍用コートに端を発し、現在では機能性とエレガンスを兼ね備えたファッションアイテムとして定着しています。
トレンチコートの定義と特徴
トレンチコートは、丈が膝下まであるロングタイプのコートで、防水性・防風性・耐久性を備えた実用的なアウターウェアとして位置づけられています。基本的にはコットンギャバジンやポリエステルなどの高密度な素材が使用され、撥水加工が施されているのが一般的です。
代表的なディテールとして、両前打ち合わせのダブルブレスト、ウエストを絞るベルト、雨除けのストームフラップ、肩章(エポーレット)、袖口のベルト、背面のベントなどがあります。これらの仕様はすべて軍服としての機能性から生まれており、現在ではそれがクラシックなデザインコードとして引き継がれています。
語源と歴史的背景
トレンチコートの「トレンチ(trench)」は「塹壕」を意味し、第一次世界大戦中に兵士たちが戦場(塹壕)で着用していたことがその名の由来です。イギリスのバーバリー社が防水性の高い「ギャバジン」素材で開発した軍用コートがその原型とされ、当時の兵士に広く支給されていました。
軍用としての役割を終えたのち、1920年代以降は民間向けのファッションアイテムとして普及し、ハンフリー・ボガートやオードリー・ヘプバーンなど、映画スターによって洗練されたイメージが浸透しました。第二次世界大戦後もトラディショナルな英国スタイルの象徴として不動の人気を保ち、エレガントでありながら実用的なコートとして広く認識されています。
現代における使用実態とスタイリング
現在のアパレル業界において、トレンチコートはシーズンレスなアウターとして定番化しており、メンズ・レディースを問わず多くのブランドで展開されています。カラーは伝統的なベージュやカーキのほか、ブラック、ネイビー、モダンなパステルトーンなど多彩に展開されており、シルエットもクラシックなAラインからオーバーサイズ、ミディ丈、ショート丈まで幅広く進化しています。
また、近年では軽量化された素材や撥水加工技術の向上により、通勤スタイルや旅行など日常のあらゆるシーンで活躍する万能コートとなっています。Tシャツやデニムと合わせてカジュアルダウンするコーディネートから、ワンピースやセットアップに羽織ってきれいめに仕上げるスタイルまで、幅広いファッションに適応する汎用性が魅力です。
まとめ
トレンチコートは、戦場での実用性を起源としながらも、時代を経てエレガンスと洗練を象徴するファッションアイテムとして進化してきました。その機能性とデザイン性のバランスは、現代においても揺るぎない魅力を放ち、今後も季節の変わり目やさまざまなライフスタイルにおいて愛され続ける存在となっています。