アパレル業界におけるカシミヤとは?
アパレル業界の分野におけるカシミヤ(かしみや、Cashmere、Cachemire)は、ヒマラヤ地域を中心に生息するカシミヤヤギから採取される非常に細く柔らかい毛を原料とした高級天然繊維です。その軽さと保温性、そしてしなやかな肌触りから、セーターやコート、ストールなどの秋冬ファッションアイテムにおいて広く使用されます。フランス語の“Cachemire”は、インド北部のカシミール地方を語源としています。
カシミヤの素材的特長とアパレル用途
カシミヤは、直径14~16ミクロンという非常に細く柔らかな繊維で、同じ重量でもウールより格段に保温性が高いという特性を持ちます。このため、防寒性と軽さを兼ね備えた素材として、上質な冬物衣料の定番となっています。特にセーターやマフラー、ストールといったアイテムでは、その繊細な風合いが活かされ、高級感のある仕上がりが求められます。
また、柔軟性に優れるカシミヤは、肌触りも極めて良好で、敏感肌の人でも安心して着用できる素材として支持を集めています。その一方で、摩擦や水分に弱く、毛玉ができやすいなどの注意点もあるため、取り扱いには繊細さが求められます。
カシミヤの歴史と語源に関する背景
カシミヤの名前は、インドのカシミール地方に由来しています。この地は古くから繊維の生産地として知られ、特に16世紀以降、ムガル帝国時代には高級織物としてヨーロッパに輸出されていました。その後、18世紀にはフランスやイギリスで「Cachemire(カシミール)」と呼ばれるショールが流行し、そこから素材名としての「Cashmere」が広まりました。
原料となるカシミヤヤギは、ヒマラヤ山脈の標高3,000m以上の寒冷地帯に生息しており、厳しい環境に適応するために生えたアンダーコート(産毛)が繊維として利用されます。モンゴル、中国内陸部、イランなどが主な生産地で、品質の差は地域や飼育方法によって異なります。
現代ファッションにおけるカシミヤの位置づけ
現代のアパレル業界において、カシミヤはラグジュアリー素材の代表格として位置付けられており、上質さとタイムレスな魅力を両立するアイテムに欠かせない存在です。特にカシミヤ100%のセーターやカーディガンは冬の定番アイテムとして人気があり、ブランドのアイコン商品としても用いられています。
一方で、価格の高騰や動物福祉の観点から、近年では「リサイクルカシミヤ」や「ブレンドカシミヤ(ウールなどとの混紡)」といった選択肢も登場しています。これにより、サステナブルでありながら高級感のある選択肢を消費者に提供することが可能となっています。
まとめ
カシミヤは、その卓越した保温性と肌触りから、アパレル業界で高く評価される天然素材です。インド・カシミール地方を発祥とし、ヨーロッパを経て世界中に広まりました。現在では、品質の高さとサステナビリティの両立が求められる時代においても、多様な形で取り入れられ続けています。