アパレル業界におけるコルセットとは?
アパレル業界の分野におけるコルセット(こるせっと、Corset、Corset)とは、ウエストを締め付けて理想的なシルエットを形成する装飾的かつ機能的な下着もしくはトップスを指します。18世紀から19世紀にかけてヨーロッパで流行し、近年はファッションアイテムとして外衣と組み合わせた着こなしにも用いられ、体型補正やスタイル演出に役立てられています。素材やデザインの多様化により、機能性と装飾性が進化しています。
コルセットの歴史と語源の背景
コルセットの語源は、フランス語の「cors(体)」に由来し、さらに小さな意味を持つ接尾辞「-et」を付けた「corset」が元となっています。16世紀のヨーロッパでは、身体のラインを強調するために男性・女性ともにシュミーズやビスチェなどが着用されましたが、当時の原型となるボーン(骨)入りの下着が登場したのは17世紀頃です。18世紀に入ると、貴族階級の女性たちが細いウエストを誇示するために、コルセットによるボディシェイプがファッションの主流となりました。
19世紀後半には産業革命によって金属製のバスティン(スチールボーン)が普及し、より強固なウエスト締めが可能になりました。一方で、健康被害への懸念から20世紀初頭には締め付けを抑えた「リラックスドコルセット」が登場し、やがて1920年代のフラッパースタイルではウエストライン自体を隠す流れが生まれ、コルセットは下火になります。
コルセットのデザインと特徴、構造上の魅力
コルセットは基本的にフロントのバスティンホックやバックのレースアップで締め付けを調整する構造を持ちます。芯材にはスチールボーンやプラスチックボーンが用いられ、ウエスト部分の固定力を高めています。生地にはサテン、ブロケード(錦織物)、コットンキャンバスなどが使われ、装飾的な刺繍やレーストリムが施されることで、ファッション性が高まります。
近年のコルセットは下着としてだけでなく、トップスやオーバーコルセットとしてアウターに重ねるデザインも増えています。ボーンレス構造のソフトコルセットは軽量で快適な着心地を提供し、着脱が容易なフロントオープン仕様やストレッチ性のある素材を採用することで、日常的に取り入れやすく進化しました。また、レザーやヴィーガンレザーを用いたタイトなウエストシェイプを強調するデザインは、ストリートファッションでも人気を集めています。
現代におけるコルセットの使われ方とトレンド
現代のファッションシーンでは、コルセットはもはや下着に留まらず、ボディコンシャスなファッションアイテムとして幅広く取り入れられています。雑誌やSNSでの着こなし提案により、ジャケットやシャツの上にレイヤードするスタイルや、ドレスのウエストにアクセントとして重ねるコーディネートが定番化しています。特に近年は、アーティストやインフルエンサーが取り入れたことで、フェミニンかつエッジーなアクセントとして注目されています。
また、ブライダルや舞台衣装においては、伝統的なボーン入りコルセットが今なお採用されており、正確なウエストシェイプと背筋のサポートを両立させるための専門的な仕立てが行われています。ヴィンテージスタイルの再評価もあり、ビクトリアンコルセットをモチーフにしたデザインがリバイバルする動きも見られます。
さらに、フィットネスやウェストトレーニング専用の「トレーニングコルセット」や「シェイプウェアコルセット」は、スポーツ機能性を持たせた素材や形状記憶ボーンを使用し、加圧効果や姿勢矯正を目的に開発されています。エココンシャス素材としてオーガニックコットンやリサイクルポリエステルを用いたエシカルコルセットも登場し、サステナブルなファッションを志向するブランドから支持を得ています。
まとめ
コルセットは、17世紀頃にヨーロッパで誕生し、18~19世紀の貴族文化で花開いたボディシェイピングの象徴的アイテムです。20世紀には一時衰退しましたが、現代ではファッションアイテムとして復権し、アウターとのレイヤードや舞台衣装、ブライダル、フィットネス用途まで多岐にわたります。素材や構造の革新により、機能性と装飾性を両立しながら進化し続けるコルセットは、今後もアパレル業界で欠かせないアイテムであり続けるでしょう。