アパレル業界におけるサイドポケットとは?
アパレル業界の分野におけるサイドポケット(さいどぽけっと、Side Pocket、Poche lat?rale)とは、衣服の左右側面の縫い目に沿って設けられたポケットのことを指します。主にパンツやスカート、コートやジャケットなどに採用され、手を入れやすく、実用性とデザイン性を兼ね備えたディテールとして重宝されています。衣服のシルエットを崩さずに収納機能を付加できる点が特徴です。
サイドポケットの特徴とデザイン的役割
サイドポケットは、衣服の側面に縫い込まれるポケットであり、外観からポケット口が見えない「スラッシュポケット」や、やや斜めに入れた「バイアスポケット」、さらにフラップ(蓋)付きのものなど、バリエーションが豊富です。パンツでは、腰位置に沿って斜めに切り込むことで手が高さを気にせず自然に入る設計となっており、動きやすさやアクセスのしやすさを追求します。
スカートやドレスの場合は、サイドシーム(側面の縫い目)にそのまま縫い付けることで、シルエットの美しさを損なわずに収納機能を確保します。コートやジャケットでは、内側が袋状になった「インサイドポケット」ではなく、外付けサイドポケットを採用することで、アクセントディテールとしてデザインの要素を追加することもあります。生地の切り替えやパイピングを施し、ブランドアイデンティティを強調する用途もあります。
サイドポケットの由来と歴史的背景
サイドポケットは、19世紀中頃の英国軍の軍服に起源を持つと言われています。当時、軍人たちは腰回りに携行したい小物を収納するため、着用時にアクセスしやすい位置としてウエスト付近の側面にポケットを配置しました。これが作業性を重視した実用的ディテールとして評判を呼び、やがて民間のワークウェアやアウトドアウェアにも広まっていきました。
20世紀初頭には、紳士服のパンツやジャケットにも取り入れられ、ポケット口を斜めに切り込むデザインがスタンダードに。女性向け衣料では1930~40年代にかけて、サイドポケット付きのスカートやドレスが登場し、エレガントさと実用性を両立させる意匠として支持を集めました。日本では明治時代末期に西洋文化が流入するとともに、民間の既製服にもサイドポケットが普及しました。
現代のファッションにおけるサイドポケットの使われ方
現代では、サイドポケットはメンズ・レディースを問わず、あらゆるアイテムに不可欠なディテールとなっています。ストリート系のワイドパンツやカーゴパンツでは、大きめのサイドポケットがデザインとしても重要視され、ミリタリーテイストやアウトドアムードを強調します。一方で、テーラードパンツやタック入りスカートでは、目立たないフロントスラッシュポケットを採用することで、すっきりとした美しいシルエットを保ちながら収納機能を確保しています。
また、サイドポケットはサステナブルファッションの文脈でも再評価されています。リサイクル素材で作られたパンツには、耐久性を高めるために強度のあるステッチを施したサイドポケットが付けられ、長く愛用できるワークウェアとして提案されています。ストレッチ入り素材を使ったレギンスやジョガーパンツでは、サイドポケットにスマートフォンや鍵を収納できるよう工夫され、機能性と快適性が両立されています。
また、ジャケットやアウターでは、サイドシームポケットを縦長にデザインすることで、手を入れたときの自然なラインを作り出し、コートの縦シルエットを強調します。さらに、防水フィルム入りの生地にサイドポケットを配置することで、アウトドアや雨天時にも使える高機能アウターとしての価値が高まります。
まとめ
サイドポケットは、衣服の側面に沿って縫い込まれたポケットで、実用性とデザイン性を両立する重要なディテールです。19世紀の軍服に起源を持ち、20世紀以降は婦人服や既製服にも広く普及しました。現代ではストリート系からサステナブルファッションまで多様な用途で活用され、収納機能を維持しつつシルエットを美しく保つための欠かせない要素として重用されています。