アパレル業界におけるテンセル素材とは?
アパレル業界の分野におけるテンセル素材(てんせるそざい、Tencel Fabric、Tissu Tencel)とは、ユーカリなどの木材パルプを原料とする再生繊維リヨセル(Lyocell)の商標名であり、柔らかく光沢感のある風合いと優れた吸湿性・環境負荷の低さが特長のエコ素材です。繊細なドレープ性と通気性を兼ね備え、シャツやワンピース、下着、スポーツウェアなど幅広い用途で使用され、サステナブルファッションの象徴的な素材として注目されています。
テンセル素材の語源と歴史的背景
テンセル素材は、1990年代初頭にイギリスのCourtaulds社によって開発され、後にオーストリアの繊維メーカーLenzing社が商標権を取得し、世界的に展開するようになりました。テンセルとは実質的にリヨセル(Lyocell)繊維の商品名であり、現在ではリヨセルとテンセルはほぼ同義で使用されています。
再生繊維とは、天然素材(木材など)をいったん溶解して繊維として再構成したもので、テンセル素材は特にユーカリなどの成長の早い樹木を使うことから持続可能性の高い素材とされています。製造時に使用される溶剤は再利用可能で、閉鎖系の生産プロセスを採用することで環境への負荷を抑えている点が高く評価されています。
テンセル素材の特長と種類
テンセル素材の最大の特徴は、その滑らかでしっとりとした肌触りにあります。天然由来でありながら、シルクのような光沢感と柔軟性を持ち、肌に優しく馴染みます。加えて吸湿性と通気性に優れており、夏場でも涼しく快適な着用感を保てることから、春夏シーズンの衣類に多く採用されています。
さらに、抗菌性や静電気の起きにくさなど、肌トラブルを防ぐ効果もあり、敏感肌の方にも適した素材とされています。シワになりにくく、洗濯後も型崩れしにくい性質があるため、家庭でのケアも比較的容易です。
種類としては、テンセル100%の生地のほか、コットンやウール、ポリエステルなどとの混紡素材も多く展開されており、風合いや機能性に応じて使い分けられています。
現代ファッションにおけるテンセル素材の活用
近年のサステナビリティ志向の高まりにより、テンセル素材は高機能なエコファブリックとして、多くのファッションブランドに採用されています。軽やかなドレープ感を生かして、ブラウスやワンピース、ボトムス、カーディガンなど幅広いアイテムに使用されており、ナチュラル志向のデザインやミニマルファッションとも親和性が高いとされています。
また、アスレジャーやルームウェア、下着など肌に直接触れるアイテムでもその柔らかさと吸湿性が評価され、快適性とファッション性の両立が求められる分野での採用が進んでいます。
加えて、テンセル素材を使用した製品には原料から加工、廃棄に至るまで環境配慮がなされている場合が多く、製品ラベルやタグにて明示されることで消費者の意識にも訴求されています。
まとめ
アパレル業界におけるテンセル素材とは、ユーカリ由来の再生繊維リヨセルを用いた環境配慮型のエコ素材であり、滑らかで光沢のある質感と優れた吸湿性を備えた繊維です。持続可能な製造プロセスや肌に優しい性質から、多様なファッションアイテムに活用され、サステナブルファッションを象徴する素材として今後も注目を集めていくと考えられます。