アパレル業界におけるメルトン生地とは?
アパレル業界の分野におけるメルトン生地(めるとんきじ、Melton Fabric、Tissu meltonn?)とは、ウールを主体とした厚手で目の詰まった縮絨(しゅくじゅう)生地で、なめらかな表面と高い保温性を特徴とする素材です。メルトン生地はその堅牢さと高級感から、コートやジャケットなどのアウターに多用され、軍用服にも使われてきた歴史を持ちます。織りと縮絨の工程を経て、風を通しにくく型崩れしにくい特性があり、クラシックで上質な印象を与える冬素材として、現在もアパレル分野で広く活用されています。
メルトン生地の定義と特徴
メルトン生地とは、ウールやウール混紡糸を綾織もしくは平織にし、さらに強い縮絨加工を施して毛羽立ちを均一に整えた、厚手で高密度の布地を指します。表面はビロードのように滑らかで、目が詰まっているため防風性・保温性に優れており、冬のアウター素材として定番の位置づけにあります。
この素材の最大の特長は、重厚感と防寒性のバランスにあります。また、縮絨によってできるフェルト状の生地は、型崩れしにくく耐久性にも優れています。裁断や縫製時にも糸のほつれが少なく、美しく仕立てることが可能な点でもアパレル業界で重宝されています。
言葉の由来と歴史的背景
メルトンという言葉の起源は、イギリスの「Melton Mowbray(メルトン・モーブレイ)」という町の名前に由来しています。この地域は中世から毛織物の生産が盛んで、特に狩猟や軍服用の丈夫で暖かい生地として知られていました。
18世紀?19世紀にかけて、メルトン生地はイギリス陸軍や海軍の制服素材として用いられ、その機能性と重厚感から高く評価されました。伝統的なバルカラーコートやピーコートなどにも使われ、クラシックな英国調スタイルの象徴的素材となっていきます。日本には明治時代に軍服素材として導入され、のちにファッション用途としても広がりを見せました。
現代の使われ方とバリエーション
現代のアパレルにおいて、メルトン生地は主にコート、ジャケット、カバーオールなどのアウターに使われています。特にチェスターコートやダッフルコートなどのフォーマル寄りなアイテムに多く、着用者に落ち着きと高級感を印象づけることができます。
近年では、従来のウール100%素材に加え、ポリエステルやナイロンなどを混紡した軽量タイプのメルトンも登場しており、より着やすさやコストパフォーマンスに配慮した製品展開が進んでいます。また、カラーや厚みにもバリエーションが増え、ファッション性の高いデザインにも活用されています。
さらに、ユニフォーム用途や制服、インテリア雑貨、ステーショナリーカバーなど、衣料以外の分野にも応用が広がっており、メルトンの高密度で丈夫な特性が様々な場面で活かされています。
まとめ
メルトン生地は、ウールを中心とした厚手で高密度な縮絨生地であり、その保温性、耐久性、形状保持力の高さから、アウター素材として長年にわたり高い評価を受けてきました。英国の伝統を背景に持つこの生地は、現代においてもクラシックなスタイルからカジュアルまで幅広く支持されており、アパレル業界における冬素材の代表格といえる存在です。