アパレル業界におけるラグランスリーブとは?
アパレル業界の分野におけるラグランスリーブ(らぐらんすりーぶ、Raglan Sleeve、Manche raglan)とは、肩から袖が一体化したように斜めに切り替えられた袖のデザインを指します。肩線をなくし、袖が首元から続く構造になっているのが特徴で、動きやすさとゆったりしたシルエットを兼ね備えています。スポーツウェアやカジュアルウェアを中心に広く使われており、機能性とファッション性の両立を実現するデザインとして長年にわたり親しまれています。
ラグランスリーブの定義と特徴
ラグランスリーブとは、首元から脇下にかけて斜めに袖が取り付けられた構造のことで、通常のセットインスリーブのような肩の縫い目が存在しません。このデザインにより、肩や腕の可動域が広がり、着用時の動きやすさが格段に向上します。
視覚的には、肩のラインが曖昧になることで、リラックス感や柔らかな印象を与え、オーバーサイズやドロップショルダーのようなシルエットにも自然にフィットします。また、肩幅の大きさを強調せず、体型を選ばずに着られる点も支持される理由のひとつです。
言葉の由来と歴史的背景
ラグランスリーブの名称は、19世紀のイギリス軍人・ラグラン男爵(Lord Raglan)に由来しています。彼はクリミア戦争中に腕を負傷し、動かしやすく、かつ防寒性のあるコートを必要としたため、肩の縫い目をなくして袖を斜めに取り付けたデザインのコートが考案されたとされています。
この機能的な設計はその後、軍服や作業着、スポーツウェアへと広がり、特にベースボールシャツやスウェットシャツなど、アクティブな動きを必要とする衣類に多用されるようになりました。日本においても戦後のカジュアル化とともに、ラグランスリーブは広く認知されるようになり、ファッションアイテムとして定着していきました。
現代の使われ方とバリエーション
現代のアパレル業界では、ラグランスリーブはスポーツウェアだけでなく、日常着やモード系アイテムにも頻繁に取り入れられています。特にスウェットやパーカー、コート、ワンピース、ジャケットなど、幅広いアイテムで採用されています。
また、配色切り替えを用いて袖部分を強調したり、袖口に向けて絞るディテールを加えたりするなど、視覚効果やシルエット演出のバリエーションも豊富です。スポーティーで快活な印象を与えると同時に、肩まわりの柔らかさを表現できるため、ユニセックスアイテムやリラックスウェアとの相性も抜群です。
サステナブルな観点からも、パターン構造が比較的簡単である点が評価されており、量産にも適したデザインとして再注目されています。
まとめ
ラグランスリーブは、動きやすさと快適さを備えた実用的な袖デザインとして、スポーツやミリタリーの分野からファッション業界へと広がりました。肩のラインを曖昧にすることで生まれる柔らかな印象と、多様なアイテムへの応用力により、今後も変わらぬ定番ディテールとして存在し続けるでしょう。