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アパレル業界におけるヤーンサンプル帳とは?

アパレル業界の分野におけるヤーンサンプル帳(やーんさんぷるちょう、Yarn Sample Book、Livre d’?chantillons de fils)とは、様々な種類や色、太さ、素材の糸(ヤーン)を収録した帳面または綴りのことを指します。主に繊維メーカーや商社が企画・販売用に用意するもので、バイヤーやデザイナーが素材選定や比較を行う際に使用されます。近年はサステナブル素材の提案にも活用されています。

ヤーンサンプル帳の概要と役割

ヤーンサンプル帳は、紡績メーカーや糸商が自社製品を紹介・提案するために作成する営業資料です。冊子形式で、糸の現物が一つひとつ貼り付けられているのが特徴で、色見本(カラーカード)や糸の番手、素材構成、用途などの情報が併記されています。これにより、アパレルデザイナーやMD(マーチャンダイザー)は、糸の質感や伸縮性、発色などを実際に確認しながら企画を立案できます。

糸見本の中には撚りの違いや染色方法の違い、シーズン限定の素材などが含まれている場合もあり、新製品のプロモーションとしても活用されます。また、テキスタイル見本帳とは異なり、まだ布地化されていない段階の原料段階での選定が可能になる点も、素材選定の初期段階において大きな利点となります。

歴史と語源、進化の背景

「ヤーン(Yarn)」は英語で「糸」を意味し、「サンプル帳」は製品見本を綴じた帳面や冊子のことです。19世紀以降の工業化とともに、ヨーロッパでは糸や織物の大量生産が進み、糸商によるサンプル配布が販促の一環として一般化しました。日本では昭和期の高度経済成長とアパレル産業の拡大とともに、国内外のバイヤー向けに「ヤーンサンプル帳」が本格的に流通し始めました。

近年では印刷だけでなく、デジタル化されたオンラインサンプル帳やQRコードによる製品情報連携など、情報伝達手段も多様化しています。環境に配慮した素材への注目が高まる中、エコ糸や再生繊維を紹介する「グリーン・ヤーンサンプル帳」も一部メーカーでは登場しています。

現在の使用シーンと機能的価値

今日、ヤーンサンプル帳は、展示会や商談会において素材訴求の核として活躍しています。特にアパレルブランド側が糸の段階から素材を選定して製品化を図る「糸からのモノづくり」が注目されており、ヤーンサンプル帳の存在は不可欠です。プロダクトデザインだけでなく、サステナビリティの可視化や製造トレーサビリティの観点からも、その記載内容の充実が求められています。

また、インハウスでの社内共有や教育用ツールとしても活用され、企画担当者や新人スタッフが糸の違いを学ぶための教材として機能しています。色や質感を直感的に比較できる利点から、オンライン情報に加えたリアルな感触の提示手段として今なお価値の高い資料形態です。

まとめ

ヤーンサンプル帳は、アパレル業界において素材選定・提案・理解を支える重要なツールです。テクノロジーが進化する中でも、糸そのものの手触りや質感を伝える物理的な役割は揺るがず、製品の品質とクリエイティビティを支える根幹として今後も求められ続ける存在です。

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