アパレル業界におけるラインとは?
アパレル業界の分野におけるライン(らいん、Line、Ligne)とは、服飾デザインにおいて形状・シルエットを決定づける構造的要素、あるいはブランドやコレクションの系統や区分を指します。衣服の外観における輪郭線としての「ライン」と、ブランドにおける「カジュアルライン」「ラグジュアリーライン」などのマーケティング的区分の両面を持ちます。美しさやターゲット層の明確化に寄与し、ファッションデザインと商品展開に欠かせない概念です。
ラインの定義と用途
アパレルにおける「ライン」は、複数の意味を持つ用語であり、大きく分けて次の2つに分類できます。1つはデザイン面での「ライン」、もう1つはブランド構造や商品企画上の「ライン」です。
デザイン面における「ライン」とは、服の輪郭や縫製によって形作られる視覚的な流れを指します。たとえば、Aライン、Iライン、Xラインといった分類があり、それぞれ異なるシルエットや印象を与えます。これは着用者の体型を補正したり、美しく見せるために考慮される重要なデザイン要素です。
一方、ブランドやコレクションにおける「ライン」は、製品のコンセプトや価格帯、ターゲット層の違いを明確にするための区分です。例えば、ある高級ブランドが比較的価格帯の低い層に向けて展開する「セカンドライン」や、スポーツウェアだけを展開する「アクティブライン」などがあります。
言葉の由来と発展
「ライン(line)」という語は、もともとラテン語の「linea(糸)」に由来し、直線や境界を意味します。アートや建築分野においても古くから使われており、ファッションにおいては19世紀のパリ・オートクチュール文化の中で衣服の輪郭を美しく描く線として重要視されるようになりました。
現代のアパレルにおいても、この語はグローバルに使用されており、英語の「line」も仏語の「ligne」も同様の意味で用いられます。日本でも昭和後期以降、海外ブランドの参入に伴い「Aライン」「エレガンスライン」「ビジネスライン」などの表現が一般化していきました。
現代の使われ方と応用
現在のアパレル業界においては、ラインという用語はデザインとマーケティングの両面で重要なキーワードです。
デザイン面では、人体にフィットする立体構造としてのライン設計が、CADや3Dモデリングを活用しながら行われています。細身のIライン、広がりを持たせたAライン、くびれを強調するXラインなど、時代のトレンドや季節によって選ばれるラインは変化します。
商品企画や販売戦略においては、「ライン展開」がブランド戦略の核心となります。たとえば、同一ブランド内でのハイエンド向けとエントリーモデルの差別化、カジュアルとフォーマルの棲み分け、さらにはメンズ・レディース・キッズといったラインごとの顧客設定がそれに該当します。
また、持続可能性への関心が高まる中で、「エコライン」「サステナブルライン」など環境配慮型のライン展開も増加しています。これにより、ブランドは社会的責任と顧客ニーズの両立を目指す動きを強めています。
まとめ
「ライン」という言葉は、アパレルの世界では造形的な美しさを表す概念であると同時に、ブランド構成を示すマーケティングの指標でもあります。その多義性こそが、ファッションという業界の柔軟性と奥深さを物語っています。デザイナーもビジネス担当者も、ラインの理解と活用によって商品の価値を高めることができるのです。