アパレル業界におけるラグコートとは?
アパレル業界の分野におけるラグコート(らぐこーと、Rag Coat、Manteau raglan)とは、ラグランスリーブと呼ばれる袖付け構造を特徴とするコートの一種で、肩線の切り替えがなく、襟ぐりから袖下にかけて斜めに接続されたデザインが特徴です。肩や腕の動きが制限されにくく、リラックス感と柔らかな印象を与えるため、カジュアルからフォーマルまで幅広く活用されます。身体へのフィット感よりも着心地を重視した設計で、オーバーサイズや重ね着スタイルとの相性も良く、現代的なシルエットを演出する定番アウターとして親しまれています。
ラグコートの構造と特徴
ラグコートは、ラグランスリーブ構造を採用したコートの総称であり、一般的なセットインスリーブと異なり、肩に縫い目がない点が最大の特徴です。袖が襟ぐりから斜めに取り付けられているため、肩幅に左右されにくく、体型を選ばず着用しやすい設計になっています。
また、肩周りの可動域が広く、重ね着をしても窮屈さを感じにくいため、寒冷地や冬場のコーディネートに最適です。シルエットは丸みを帯びやすく、柔らかい印象を与えるため、フォーマルな場面でも威圧感を与えず、穏やかで洗練された装いが可能になります。近年では、ユニセックスなアイテムとしても評価が高まり、年齢や性別を問わず支持されています。
言葉の由来と歴史的背景
「ラグコート」の語源は、「ラグランコート(Raglan Coat)」に由来し、ラグランスリーブの名は19世紀のイギリス軍人フィッツロイ・ジェームズ・ヘンリー・ラグラン卿にちなんでいます。クリミア戦争で負傷した彼のために、肩の動作が容易になるよう設計された袖が起源とされています。
その後、ラグランスリーブはスポーツウェアやミリタリーウェアにも採用され、機能性を備えた衣服の設計として進化していきました。コートにおいてもこの構造が取り入れられ、「ラグコート」として定着していきました。特に日本では、「ラグランスリーブ+コート」のスタイルを略してラグコートと呼ぶようになり、1980年代のカジュアルファッションの中で広く浸透しました。
素材としてはウールやメルトン、ナイロン混紡など防寒性の高いものが多く用いられ、冬場の主力アウターとして位置づけられることが多いのもこのコートの特徴の一つです。
現代におけるラグコートの使われ方
現在、ラグコートは、クラシックとモダンの融合を象徴するコートデザインとして、多くのブランドやセレクトショップで展開されています。トレンドであるオーバーサイズの流れとも親和性が高く、厚手のニットやフーディーなどとのレイヤードスタイルにも適応しやすいシルエットです。
また、肩の構造が緩やかで立体感のあるフォルムを生み出すことから、ジェンダーレスで中性的な印象を演出するアイテムとしても活用されており、都会的でリラックスした着こなしに適しています。カラーバリエーションや素材の選択肢も豊富で、ミニマルなデザインからクラシカルなチェック柄まで幅広く展開されています。
特に秋冬の主力アイテムとして、着脱のしやすさや防寒性、そして重ね着との相性の良さなど、機能面とファッション性を両立させる万能コートとして評価が高まっており、今後もスタイルの定番として支持され続けることが予想されます。
まとめ
ラグコートは、ラグランスリーブを特徴とする動きやすく洗練されたコートであり、肩周りの構造によってリラックスした着心地と優美なシルエットを実現するアウターです。時代の変化とともに進化しながら、現代のライフスタイルやトレンドに対応する汎用性の高いアイテムとして、アパレル業界での存在感を保ち続けています。