アパレル業界におけるラウンドパターンとは?
アパレル業界の分野におけるラウンドパターン(らうんどぱたーん、Round Pattern、Patron arrondi)とは、衣服の設計や製図(パターンメイキング)において、身体の立体的な曲線を意識して作られたパターン(型紙)を指します。特に肩、袖、背中、ヒップラインなどにおいて自然な丸みをもたせた構造が特徴で、着用時のフィット感や動きやすさ、柔らかいシルエットを実現します。立体裁断の技術や人体工学に基づいたアプローチと親和性が高く、高級仕立てやハイファッションの分野で多く用いられる技法のひとつです。
ラウンドパターンの構造と特徴
ラウンドパターンとは、衣服を立体的に捉え、人体の曲線に自然に沿うよう設計されたパターンのことです。従来の平面的なパターン(フラットパターン)とは異なり、肩や腕、背中、ウエスト、ヒップなどの立体的な起伏を反映することで、フィット性と美しいフォルムを両立させることが可能となります。
このパターンでは、曲線を多用した切り替え線やダーツ、シーム位置の調整が行われ、着る人の動きに合わせた快適な着心地と自然なドレープ感が得られます。特に女性向けのドレスやジャケット、または高級オーダーメイドのスーツなど、身体に吸い付くようなシルエットが求められるアイテムにおいて多く使用されます。
言葉の由来と歴史的背景
「ラウンドパターン」という用語は、英語の「round(丸い、曲線的な)」と「pattern(型紙)」を組み合わせた言葉で、日本のパターンメイキングやファッション教育の現場で使われてきた和製英語的な表現です。フランス語では「patron arrondi」や「coupe en courbes」などと表現され、クチュール技術や立体裁断(モデリズム)との関係性も強いです。
ラウンドパターンの考え方は、20世紀初頭のオートクチュール文化の発展と共に高度化し、マネキン上で布を直接ドレーピングする立体裁断の技術と密接に関係しています。その後、これらの技術が工業化されたプレタポルテ(既製服)にも応用され、今日のパターン設計の重要な要素となりました。
特に1970年代以降、コンピューターによるCADシステムの導入とともに、より精密なカーブ設計が可能になり、ラウンドパターンはアパレルの量産体制でも取り入れられるようになりました。
現代におけるラウンドパターンの使われ方
現代では、ラウンドパターンは高級感や着心地、動きやすさを重視する製品において積極的に採用されています。レディースジャケットやドレス、メンズスーツ、アウターウェアなど、曲線を多用した立体的なフォルムが求められる場面で活躍しています。
また、スポーツウェアやワークウェアなど機能性を重視するアイテムでも、身体の可動域に合わせて計算されたパターン設計が必要とされ、ラウンドパターンに近い考え方が用いられています。3Dモデリングや3Dトワルなどの技術が進化したことにより、設計の精度と表現の自由度も飛躍的に向上しました。
さらに、ジェンダーレスなシルエットや、オーバーサイズでありながら立体感のあるフォルムを作る際にも、ラウンドパターンの技術が応用されており、トレンドに左右されず通用する設計思想として重要性が増しています。
まとめ
ラウンドパターンは、人間の立体的な身体構造を忠実に反映し、美しさと着心地を両立させるための設計技法として、アパレル業界で欠かせない技術です。伝統的なクチュール技術から現代のデジタルパターンまで、その思想は受け継がれ、今後も品質と快適性を追求する製品づくりにおいて重要な役割を果たし続けることでしょう。