アパレル業界におけるラウンドステッチとは?
アパレル業界の分野におけるラウンドステッチ(らうんどすてっち、Round Stitch、Couture arrondie)とは、縫製において丸みを帯びた形状で縫い合わせる技法を指し、主にポケット口、袖口、襟ぐりなどに用いられるステッチの一種です。装飾性と立体感を兼ね備えており、フォーマルからカジュアルまで幅広い衣類にアクセントを加える要素として活用されています。縫製の安定性だけでなく、視覚的な柔らかさや上品な印象を演出する手法であり、手作業による丁寧な仕上げが求められる場面も多く、職人技が際立つ技法のひとつです。
ラウンドステッチの定義と特徴
ラウンドステッチとは、直線的な縫い合わせとは異なり、円弧状またはカーブを描くように縫われるステッチの総称です。特に、丸みを帯びた縁取りやカーブラインに沿って均一にステッチを施すことで、美観と強度を両立させる縫製技術とされています。
この手法は、ポケットフラップの縁、袖や裾のカーブ、襟元のデザインなどに取り入れられることが多く、視覚的にやわらかく上品な印象を演出します。また、縫い目のラインそのものをデザイン要素として際立たせる効果があり、細部にまでこだわった丁寧な作りが感じられるディテールです。
言葉の由来と歴史的背景
「ラウンドステッチ」という呼称は、英語の “round”(丸い、曲線的な)と “stitch”(縫い目、ステッチ)を組み合わせた表現で、日本では1990年代以降、縫製ディテールの多様化とともに広く認知されるようになりました。特に欧米の高級仕立て服においては、曲線部分の縫製技術は長年の職人技術の結晶として扱われています。
仏語では「couture arrondie(クチュール・アロンディ)」と表現され、ハンドメイドやオートクチュールにおける繊細な縫製工程の一環として重要視されています。特にカーブ部分はテンションがかかりやすく、均一な縫製を保つためには熟練した技術が必要とされるため、量産工程では自動化しにくいパートとされています。
現代の使われ方とバリエーション
現代において、ラウンドステッチはデザインアクセントと実用性の両立を目的に、さまざまなアイテムに活用されています。たとえば、レザージャケットのポケット周辺にあしらわれるラウンドステッチは、素材の厚みを均一に保ちつつ耐久性を高め、同時に高級感を演出する要素となります。
また、デニムやカジュアルジャケットでは、コントラストカラーの糸を用いて視認性を高めるラウンドステッチも人気です。これはスポーティーかつグラフィカルな印象を生み、アイテム全体のデザイン性を引き立てます。特にアウトドアウェアやストリート系アイテムにおいては、曲線美を活かした縫製がトレンドの一環となっています。
一方で、ラウンドステッチは縫製ラインがずれると不均一な印象になりやすいため、パターン設計と縫製精度の両面で高い品質管理が求められます。ファストファッションにおいては装飾的な意味合いで簡略化されるケースもありますが、高級アパレルやハンドメイドアイテムでは依然として重要な技術要素です。
まとめ
ラウンドステッチは、カーブに沿った縫製ラインを活かして、上品さ・柔らかさ・機能性を表現するアパレル技術のひとつです。曲線を意識したディテール設計が求められる現代の服作りにおいて、見た目と耐久性を両立する有効な手法として、引き続き幅広く活用されています。