アパレル業界におけるラウンドデザインとは?
アパレル業界の分野におけるラウンドデザイン(らうんどでざいん、Round Design、Design arrondi)とは、衣服やアクセサリーのディテール、シルエット、ラインなどにおいて、角のない丸みを帯びた形状や構造を指す用語です。主に柔らかな印象や女性らしさ、親しみやすさを演出する目的で取り入れられます。カーブを描く裾や丸首のネックライン、袖山の丸みなど、構造的要素として活用されるとともに、デザイン全体に有機的な印象を与える傾向があります。
ラウンドデザインの言葉の由来と歴史的背景
ラウンドデザインという言葉は、英語の “round(丸い)” と “design(デザイン)” を組み合わせた造語で、視覚的に角ばった要素を避け、曲線的で穏やかな印象を与えるデザイン手法を意味します。この概念自体は、アール・ヌーヴォー(Art Nouveau)やアール・デコ(Art D?co)といった20世紀初頭の装飾芸術運動の中ですでに登場しており、建築や家具、衣服などに柔らかな曲線を取り入れることで、感性や生命感を表現しようとする潮流の中で発展してきました。
アパレルの分野では、1950年代以降のウエストシェイプやフレアスカート、1960年代のベビードールワンピース、1990年代のナチュラル系ファッションなどにおいて、ラウンドデザインが強調されました。角を立てないフォルムは、戦後の平和志向やフェミニンなスタイルへの嗜好と結びつきやすく、現在に至るまで繰り返し流行しています。
アパレルにおける具体的なラウンドデザインの例
ラウンドデザインは、さまざまな形でファッションアイテムに取り入れられています。たとえば以下のような要素が代表的です。
- 丸みを帯びたネックライン(クルーネック、ラウンドネック)
- ラウンドカットの裾(シャツやブラウスのカーブ状の裾ライン)
- 曲線を描くパターン(ラグランスリーブやコクーンシルエットなど)
- 襟やポケット、ヨークなどのディテールに施される曲線
これらはすべて、直線的でシャープな印象よりも、優しさ・やわらかさ・温もりを視覚的に表現するために活用されます。加えて、体型を和らげて見せたり、親しみやすい印象を与えたりする効果もあるため、日常着やレディースファッションにおいて高い需要があります。
現代のファッションにおけるラウンドデザインの役割
現代のアパレルデザインでは、ラウンドデザインは単なる装飾的要素ではなく、心理的な快適さやユーザー体験に訴える設計思想とも結びついています。ユニセックスやジェンダーレス、サステナブルファッションといった現代的なキーワードにおいても、丸みのあるフォルムは境界を曖昧にし、包容力や安心感を象徴する形状として重視されます。
特に、ポストパンデミック以降は、リラクシングな着心地やストレスフリーなフォルムが求められ、コクーンシルエットやラウンドカットのトップス、ルームウェアなどが注目されています。こうしたデザインの中に、直線ではなく曲線を選ぶ意図が強く現れています。
まとめ:ラウンドデザインの魅力と今後の展望
アパレル業界におけるラウンドデザインは、歴史的にも視覚的にも多くの意味を持つ重要な要素です。角のないフォルムは、着る人にやさしさと柔軟さを与え、見る人に安心感や親しみを抱かせるため、今後も継続的に用いられていくでしょう。
機能性と感性を兼ね備えたデザインとして、単なる美的な工夫を超え、心地よさと共生性を体現するアプローチとしてもその存在意義を高めています。ラウンドデザインは、まさに現代の「共感される服作り」に不可欠な構造要素といえるでしょう。