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美術におけるアマルナ美術様式とは?

美術におけるアマルナ美術様式(あまるなびじゅつようしき、Amarna Art Style、Style artistique d'Amarna)は、古代エジプト第18王朝のファラオ、アクエンアテン(アメンホテプ4世、在位:紀元前1353年〜1336年頃)の時代に発展した独特の美術様式を指します。従来のエジプト美術の厳格な様式を破り、自然主義的で流動的な表現を取り入れたことが特徴です。特に、王家の人物描写では長い顔、突き出た腹部、細長い四肢などのスタイルが強調され、従来の理想化された王像とは異なる革新的な造形が見られます。



アマルナ美術様式の特徴

アマルナ美術様式は、それ以前のエジプト美術と比べて写実的で柔軟な表現が取り入れられました。主な特徴は以下の通りです。

  • 王族の独特な身体表現 – アクエンアテンや王族の彫像は、細長い顔、大きな唇、突き出た腹部、長い四肢を持つ異様なプロポーションで表現される。
  • 動的なポーズ – 従来の硬直した姿勢ではなく、自由で親密な仕草が描かれる。
  • 家族の情景の描写 – 王と王妃、子どもたちが愛情を示し合う姿が美術作品に頻繁に登場。
  • 自然の要素の重視 – 花、鳥、動物など生命の表現が増え、より現実的な描写がなされる。
  • アテン神の象徴 – 太陽神アテンが光線の手として表現され、王や王妃に生命を授ける様子が描かれる。

アマルナ美術様式は、エジプト美術史の中でも異彩を放つ革新的な表現として知られています。



アマルナ美術の発展と歴史的背景

アマルナ美術様式は、アクエンアテンが宗教改革を行い、伝統的な多神教を否定し、太陽神アテンを唯一神として崇拝したことに密接に関連しています。

1. 宗教改革とアマルナ美術の誕生
アクエンアテンは、テーベの神官団の影響を排除し、新たな都「アケトアテン(現在のアマルナ)」を建設しました。この新都で制作された美術作品は、それまでのエジプト美術とは異なる独特のスタイルを持っていました。

  • アテン神信仰 – 太陽神アテンが唯一神とされ、王は神の代理人として崇められた。
  • 新しい王族の描写 – 王と家族が愛情を示し合う姿が頻繁に描かれるようになった。

2. アマルナ美術の最盛期
アクエンアテンの統治下では、宮殿や神殿の壁画、彫像、レリーフなどにアマルナ美術様式が広く取り入れられました。

  • ネフェルティティの胸像 – 代表的なアマルナ美術の傑作で、王妃ネフェルティティの優美な姿が表現されている。
  • アクエンアテンの彫像 – 従来のエジプト王像とは異なり、柔らかい表情と独特の体形を持つ。

3. アマルナ美術の終焉
アクエンアテンの死後、息子のツタンカーメンが即位し、エジプトは再び多神教へと回帰しました。

  • アケトアテンは放棄され、テーベに遷都
  • アマルナ美術の作品は破壊され、従来のエジプト美術が復活。


アマルナ美術の技法と表現手法

アマルナ美術では、特有の技法や表現手法が使用されました。

1. 彫像とレリーフの特徴
アマルナ時代の彫像やレリーフは、伝統的なエジプト美術と比較してより自然な動きと表情が取り入れられています。

  • 顔の特徴 – 長い頭、突出した唇、アーモンド型の目。
  • 身体の曲線 – 肩は丸く、腰は細く、腹部が突出している。

2. 壁画の特徴
宮殿や神殿の壁画では、動的で親密なシーンが描かれるようになりました。

  • 王と家族の日常 – アクエンアテンが王妃ネフェルティティや子供たちと戯れる場面。
  • 自然の描写 – 花、鳥、魚など、エジプトの豊かな自然が繊細に描かれる。

3. 色彩の使用
アマルナ美術の色彩は、従来のエジプト美術と比べて明るく柔らかい色調が特徴的です。

  • 金色や赤褐色 – 王や神の神聖性を象徴。
  • 青や緑 – 自然や生命の象徴として使用。


現代美術におけるアマルナ美術の影響

アマルナ美術様式は、後のエジプト美術に直接影響を残さなかったものの、美術史や現代アートにおいて再評価されています。

1. ネフェルティティ像の影響
ベルリンの「ネフェルティティの胸像」は、古代美術の最高傑作の一つとして世界的に有名であり、多くの美術家に影響を与えています。

2. 現代美術における再解釈
20世紀以降、アマルナ美術の独特な人体表現は、シュルレアリスムやモダニズムの芸術家たちによって再解釈されています。

  • パブロ・ピカソ – アフリカ彫刻とともに、アマルナ美術のスタイルに影響を受けた。
  • ヘンリー・ムーア – 曲線的な人体表現の研究にアマルナ美術の要素を取り入れた。


まとめ

アマルナ美術様式は、アクエンアテンの宗教改革と密接に結びついた短期間の美術運動であり、それまでのエジプト美術には見られなかった自然主義的な表現を取り入れました。

王族の独特な描写、動的な構図、愛情表現、太陽神アテンの象徴的な表現など、革新的な要素が多く含まれ、美術史における特異なスタイルとして現代でも注目されています。


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