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美術におけるオベリスクとは?

美術におけるオベリスク

美術の分野におけるオベリスク(おべりすく、Obelisk、Obélisque)は、古代エジプトを起源とする石造の記念碑を指します。

高さ数メートルから数十メートルに及ぶ細長い四角柱で、先端がピラミッド状に尖っているのが特徴です。もともとは太陽神ラーを崇拝する宗教的シンボルとして建造されましたが、その威厳ある形状から権力の象徴としても用いられるようになりました。

この記念碑は、その象徴性と建築的美しさから、エジプトを超えてローマ帝国、そして近代ヨーロッパへと伝播し、多くの文化や時代に影響を与えています。現代でも都市のランドマークとして、あるいは現代アートのインスピレーションとして、その存在感を放ち続けています。



オベリスクの歴史と発展

オベリスクの起源は、紀元前2500年頃の古代エジプト古王国時代に遡ります。当時、オベリスクは太陽神ラーの象徴として、神殿や王宮の前に立てられました。特に、新王国時代(紀元前16-11世紀)には、ルクソール神殿やカルナック神殿などに多くのオベリスクが建立され、その建造技術が飛躍的に発展しました。

ローマ帝国時代には、オベリスクは戦利品としてローマに運ばれ、公共の広場や競技場に立てられました。皇帝アウグストゥスは最初にアレクサンドリアからオベリスクを運び、その後多くの皇帝がこれに倣いました。これにより、オベリスクはヨーロッパ文化にも影響を与えるようになり、ルネサンス期以降は都市計画の重要な要素として採用されるようになりました。



オベリスクの特徴

オベリスクの最大の特徴は、その象徴性と建築的美しさにあります。この記念碑は、その高さと細長い形状から、天と地をつなぐシンボルとして崇められました。先端のピラミディオン(小ピラミッド)は太陽光を反射するように設計され、神聖な光を象徴していました。また、その表面には、神話や王の業績を記した象形文字が精密に刻まれ、当時の宗教観や歴史を現代に伝えています。

石材も重要な要素です。オベリスクは主にアスワン産の赤色花崗岩が使用され、その耐久性の高い特性から、数千年を経た今も当時の美しさを保っています。一本の巨石から削り出されるため、運搬と建立には高度な技術が必要とされました。



オベリスクの建築技術

オベリスクの建造には驚くべき技術力が投入されていました。重量数百トンにも及ぶ巨石を、アスワンからナイル川沿いに運搬し、正確に直立させるには、高度な工学知識が必要でした。古代エジプト人は傾斜路と梃子の原理を活用し、砂を使った緩衝材で衝撃を和らげながら建立しました。

特に注目すべきはその石材加工技術です。銅の工具と研磨用の石英砂を使用して、完璧な直線と滑らかな表面を実現しています。現代の調査では、表面の平坦度の誤差が1mm以下という驚異的な精度が確認されており、当時の技術水準の高さを物語っています。


オベリスクの現在の使われ方

現在、オベリスクは世界中の公共の広場や公園、博物館など、さまざまな場所で展示されています。パリのコンコルド広場ロンドンのテムズ川河畔ニューヨークのセントラルパークなど、都市のシンボルとして親しまれています。特に、その象徴性と建築的美しさから、観光名所として多くの人々を引きつけています。

現代アートの分野でも、オベリスクは重要な役割を果たしています。ミニマリズムの作家たちはその単純ながら力強い形態にインスピレーションを得て、金属やガラスを用いた現代版オベリスクを制作しています。また、都市計画においても、広場の中心にオベリスクを配置するデザインが今も受け継がれています。



まとめ

オベリスクは、古代エジプトを起源とする石造の記念碑として、美術史において極めて重要な存在です。単なる建築物を超え、宗教的シンボル、権力の表象、そして美術的インスピレーションの源として、数千年にわたって人類の文化に影響を与え続けてきました。

その特性を活かし、象徴性と建築的美しさを表現することができるオベリスクは、現代においても都市景観や現代アートにおいて重要な役割を担っています。デジタル時代となった今でも、その存在感は衰えることなく、むしろ古代と現代を結ぶアートオブジェクトとして、その需要はさらに高まることが予想されます。


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