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美術におけるキャンバスとは?

美術の分野におけるキャンバス(きゃんばす、Canvas、Toile)は、絵画を描くための支持体として広く使用される布地のことを指します。主に綿や麻で作られ、木製の枠に張られて使用されます。キャンバスはその耐久性と柔軟性から、油彩画やアクリル画の支持体として最も一般的に用いられています。



キャンバスの歴史と起源

キャンバスの歴史は古く、その起源は中世ヨーロッパに遡ります。当時、絵画の支持体として木板が主流でしたが、14世紀頃からイタリアやフランドル地方で布地が使用されるようになりました。特にフランドル地方では、油彩画の技法が発展したことにより、キャンバスの需要が高まりました。布地は木板に比べて軽量で持ち運びが容易であり、大規模な作品にも適していたため、次第に広く普及していきました。

16世紀以降、キャンバスはヨーロッパ全土で一般的な支持体として定着します。特にヴェネツィアでは、湿気の多い気候に適したキャンバスが重宝され、ティツィアーノティントレットといった画家たちが積極的に使用しました。その後、キャンバスはバロック期から近代にかけて、西洋美術の主要な支持体として発展を続けます。



キャンバスの材質と製造工程

キャンバスは主に綿で作られます。麻は耐久性が高く、歴史的に高級品として扱われてきましたが、綿は比較的安価で柔軟性に優れているため、現代では広く使用されています。キャンバスの製造工程は、まず布地を織り、その後、木枠に張り付けられます。布地は「地塗り」と呼ばれる下処理を施され、絵具が浸透しないようにします。地塗りにはジェッソ(石膏を主成分とした塗料)が用いられ、表面を滑らかに仕上げることで、画家が自由に描画できる環境を整えます。

現代では、キャンバスの種類も多様化しており、織り目の粗さや厚さ、地塗りの有無など、用途に応じて選択できるようになっています。また、環境に配慮した素材を使用したキャンバスも開発され、アーティストのニーズに応える形で進化を続けています。



キャンバスの現代的な使われ方

現代美術において、キャンバスは依然として重要な支持体です。油彩画やアクリル画だけでなく、ミクストメディアやデジタルアートの一部としても活用されています。特に、デジタルプリント技術の発展により、キャンバスに直接デジタル画像を転写する手法が普及し、新しい表現方法として注目されています。

また、キャンバスはアート以外の分野でも使用されています。例えば、ファッションやインテリアデザインにおいて、キャンバス地はその丈夫さと質感から、バッグや家具の素材としても人気があります。さらに、キャンバスを模したデジタルツールも開発され、デジタルアーティストが伝統的なキャンバスの質感を再現しながら創作できるようになっています。



まとめ

キャンバスは、美術史において重要な役割を果たしてきた支持体であり、その歴史と技術は現代でも進化を続けています。伝統的な絵画からデジタルアートまで、幅広い表現を支えるキャンバスは、今後もアートの世界で欠かせない存在であり続けるでしょう。


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