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美術におけるキャンバスの下地処理とは?

美術の分野におけるキャンバスの下地処理(きゃんばすのしたじしょり、Canvas Priming、Préparation de la toile)は、キャンバスに絵具を描く前に施す準備工程を指します。この処理は、キャンバスの耐久性を高め、絵具の定着を良くするために行われます。下地処理には、ジェッソやアクリル系の下地剤が使用され、キャンバスの表面を滑らかに仕上げることが一般的です。



キャンバスの下地処理の歴史と重要性

キャンバスの下地処理の歴史は、油彩画が発展したルネサンス期に遡ります。当時、画家たちはキャンバスの吸収性を抑え、絵具の定着を良くするために、動物の皮や骨から作られた膠(にかわ)をキャンバスに塗布していました。その後、石膏を主成分としたジェッソが開発され、より効果的な下地処理が可能となりました。

下地処理は、キャンバスの耐久性を高めるだけでなく、絵具の発色を良くし、作品の長期的な保存を可能にします。特に油彩画では、下地処理が不十分だと、絵具がキャンバスに浸透してしまい、作品の劣化を招くことがあります。そのため、下地処理は絵画制作において欠かせない工程となっています。



下地処理の種類と方法

下地処理には、主にジェッソアクリル系下地剤の2種類が使用されます。ジェッソは伝統的な下地剤で、石膏を主成分とし、油彩画に適しています。一方、アクリル系下地剤は、アクリル絵具を使用する場合や、現代的な作品制作に適しています。

下地処理の方法は、まずキャンバスを平らな場所に置き、下地剤を均一に塗布します。この際、刷毛やローラーを使用して、キャンバスの表面にムラができないように注意します。塗布後、下地剤が完全に乾燥するまで待ち、必要に応じて研磨を行います。研磨は、キャンバスの表面を滑らかにし、絵具の定着を良くするために行われます。

また、下地処理の回数は、作品の種類や画家の好みによって異なります。一般的には、2~3回の下地処理が行われますが、より厚みを持たせたい場合は、さらに多くの回数を重ねることもあります。



現代における下地処理の進化

現代では、下地処理の技術や材料が進化し、より多様な選択肢が提供されています。例えば、環境に優しい素材を使用した下地剤や、特定の効果を生み出すための特殊な下地剤が開発されています。これにより、アーティストは作品の表現力をさらに高めることが可能となりました。

また、デジタル技術の進歩により、下地処理の工程を簡略化するツールも登場しています。例えば、デジタルプリント用のキャンバスには、あらかじめ下地処理が施されたものが多く、アーティストはすぐに制作に取り掛かることができます。



まとめ

キャンバスの下地処理は、絵画制作において重要な準備工程であり、作品の品質と耐久性を左右する重要な要素です。その歴史と技術は、時代とともに進化を続け、現代のアーティストに新たな表現の可能性を提供しています。今後も、下地処理は美術の世界で重要な役割を果たし続けるでしょう。


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