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美術におけるポストインターネットアートのメディア横断性とは?

美術の分野におけるポストインターネットアートのメディア横断性(ぽすといんたーねっとあーとのめでぃあおうだんせい、Post-Internet Art’s Media Transversality、Transversalite des Medias dans l’Art Post-Internet)は、インターネット以後の芸術表現において、デジタルとフィジカルを自在に行き来しながら複数のメディアを統合・拡張する特性を指します。情報化社会の進展とともに現代美術の重要なテーマとなっています。



ポストインターネットアートの概念と背景

ポストインターネットアートのメディア横断性を理解するためには、まず「ポストインターネットアート」という概念自体を押さえる必要があります。これは、インターネットが日常化した社会において、ネット環境を前提に創作・発表される芸術活動を指します。

2000年代後半から登場し、インターネットそれ自体をテーマにするだけでなく、ネットを当たり前のインフラとする現代社会に生きる感覚を表現しようとする動きが強まりました。この流れの中で、単一のメディアにとどまらず、多層的なメディア横断が自然な表現手段となったのです。



メディア横断性の特徴と表現方法

ポストインターネットアートのメディア横断性の特徴は、デジタルとアナログ、オンラインとオフラインといった境界を柔軟に超える点にあります。ウェブサイト、SNS、3Dプリント、映像、インスタレーション、パフォーマンスなど、さまざまな媒体がシームレスに結びつきます。

アーティストたちは、ネット上で生成されたイメージを現実空間にインストールしたり、現物作品を逆にデジタル化して拡散したりするなど、メディア間を行き来しながら新たなリアリティを探求しています。この自由な横断性が、旧来のジャンル区分を乗り越えるダイナミズムを生み出しているのです。



代表的な作家と作品に見る横断性の実践

ポストインターネットアートのメディア横断性を象徴する作家には、オリビア・シュロスシュナイダー、トレバー・パグレン、ペトラ・コートライトなどが挙げられます。彼らはインターネット的感覚を反映しながら、複数メディアを駆使して作品を展開しています。

たとえば、ペトラ・コートライトはデジタルGIF作品を起点に、そこから絵画・映像・インスタレーションへと展開する手法を採用しています。また、トレバー・パグレンは監視社会というテーマを、写真・映像・デジタルマップといった異なるメディアで横断的に表現することで、複雑な現代の情報環境を可視化しています。



現代における意義と未来への展望

現代社会において、ポストインターネットアートのメディア横断性は単なる表現技法ではなく、時代感覚そのものを体現するものとなっています。デジタルとフィジカルが一体化し、オンラインとオフラインの境界が希薄になった現代において、芸術もまた複層的なメディア体験を提供する役割を担っています。

今後は、AIやVR、メタバースなど新技術との融合を通じて、さらにメディアの拡張が加速することが予想されます。ポストインターネットアートは、これからの芸術表現においてますます中心的な存在となるでしょう。



まとめ

「ポストインターネットアートのメディア横断性」は、インターネット以後の社会における美術表現の新たな地平を切り開く重要な概念です。デジタルとフィジカルを自在に横断しながら、複雑化する現代世界を鋭く映し出しています。

今後も技術革新と共に進化を続けるこの表現は、美術の可能性を広げ、社会との新たな関係性を築くカギとなるでしょう。

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