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美術におけるポスト印象派とは?

美術の分野におけるポスト印象派(ぽすといんしょうは、Post-Impressionism、Postimpressionnisme)は、19世紀末から20世紀初頭にかけて、印象派の描写手法を基盤にしつつ、それを超えて独自の表現を追求した芸術運動を指します。個々の作家による強い主観性や形式の探求を特徴とし、現代美術の発展に大きな影響を与えました。



ポスト印象派の誕生と歴史的背景

ポスト印象派は、1870年代から1880年代にかけて、クロード・モネらによって確立された印象派の運動に続く形で登場しました。印象派が目指した「光と色彩の瞬間的な捉え方」に対し、ポスト印象派の画家たちは、より構成的な描写や感情表現、象徴性を追求しました。

この潮流は、印象派の限界を意識しつつ、単なる視覚的再現を超えた個々の世界観を表現する方向へと展開しました。特に、都市化、産業化が進むヨーロッパ社会において、内面的な真実や精神性を描こうとする試みが強まったのです。

ポスト印象派という呼称は、イギリスの批評家ロジャー・フライによって1906年に提唱され、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、スーラなどの画家たちがその代表例とされています。



表現手法と主題の特徴

ポスト印象派の表現は、写実的な観察に頼らず、色彩、形態、構図に独自の理論や感情を反映させる点が特徴です。色彩はより自由に使われ、デフォルメや誇張が意識的に取り入れられました。

たとえばセザンヌは、自然を幾何学的な形態に還元しようと試み、ゴッホは強烈な色彩と筆致を用いて感情を直接的に表現しました。ゴーギャンは象徴的な色使いと平面的な構成を志向し、スーラは科学的な色彩理論に基づいた点描技法を発展させました。

こうした表現の多様性は、印象派とは異なる新たな絵画の可能性を切り拓き、後のモダニズムへの橋渡しとなりました。



代表的な作家とその業績

ポスト印象派を代表する画家には、ポール・セザンヌ、フィンセント・ファン・ゴッホ、ポール・ゴーギャン、ジョルジュ・スーラなどが挙げられます。彼らは、それぞれ異なるアプローチで新たな表現領域を開拓しました。

セザンヌは、形態と色彩の調和を追求し、近代絵画の父と称される存在となりました。ゴッホは激情を色と線に込め、ゴーギャンは非西洋文化への関心を作品に反映し、スーラは点描法により光学理論を応用した絵画を生み出しました。

これらの画家たちは、個々の探求を通じて、後のフォーヴィスム、キュビスム、表現主義といった20世紀美術の基礎を築きました。



ポスト印象派の意義とその後への影響

ポスト印象派は、絵画における「見たままを描く」という考え方から脱却し、芸術家の内的世界を表現する道を切り開きました。この流れは、モダンアートの多様な展開を生む土壌となり、現代美術の基盤を形成することとなります。

20世紀に入ると、彼らの革新性はピカソやマティスら次世代の作家たちに多大な影響を与えました。ポスト印象派の主観性と構成性を重視する態度は、抽象表現や前衛芸術の原動力ともなり、今日に至るまで美術の根底に息づいています。

こうしてポスト印象派は、単なる印象派の後継ではなく、近代美術への飛躍を支えた重要な運動として評価されています。



まとめ

「ポスト印象派」は、印象派の技法を受け継ぎながら、個々の表現の自由と内面的探求を推し進めた美術運動です。

色彩、構成、感情表現の革新を通じて、モダニズム美術の基盤を築く重要な役割を果たしました。

その精神は、20世紀以降の多様な美術表現に大きな影響を与え、今日の現代美術にも広く受け継がれています。

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