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美術におけるモーションキャプチャードローイングとは?

美術の分野におけるモーションキャプチャードローイング(もーしょんきゃぷちゃーどろーいんぐ、Motion Capture Drawing、Dessin par Capture de Mouvement)は、人間の動き(モーション)をセンサーやカメラでデジタル的に記録し、その軌跡や運動情報をもとに線画や視覚作品を生成する表現手法を指します。身体の動作そのものを「描く」行為へと転換することで、従来のドローイング概念を拡張するアプローチです。



モーションキャプチャードローイングの起源と背景

モーションキャプチャードローイングは、1990年代以降、モーションキャプチャー技術(MoCap)の進化とともに美術分野に応用され始めました。もともとこの技術は、映画やゲーム、スポーツ解析の分野で発展したものであり、人間の動きをデータとして可視化できる点が注目されました。

アートにおいては、パフォーマンスアートやインタラクティブアートの文脈で、人間の身体性や時間性を視覚表現に変換する試みがなされ、ドローイングという伝統的ジャンルにも動きと記録の融合という新たな方向性が生まれました。現在では、ジェネレーティブアートやデジタルパフォーマンスと連携しながら、ますます多様な展開を見せています。



モーションキャプチャードローイングの技法と表現特徴

モーションキャプチャードローイングでは、身体に装着したモーションキャプチャーデバイスや、カメラによるモーショントラッキングを用いて、動きの軌跡や速度、リズムなどをリアルタイムまたは記録データとして取得します。

取得したモーションデータを基に、コンピュータプログラムが線描や立体的なグラフィック、3Dモデリングに変換することで、身体動作がそのまま「描画」へと転換されます。これにより、無意識的な動作、即興的なパフォーマンス、あるいは儀式的な動きなど、通常のドローイングでは捉えきれない身体性が作品に刻み込まれます。



代表的な作家と作品に見る展開例

モーションキャプチャードローイングの領域で注目される作家には、ウィリアム・フォーサイス、トレバー・パグレン、バーバラ・ハンブルトンなどがいます。彼らは、ダンス、パフォーマンス、コンピュータアートを横断しながら、動きと視覚化の関係を探究しています。

たとえば、フォーサイスはダンサーの動きから生成される動的な線をデジタル空間に描き出し、運動そのものを彫刻的に可視化する試みを行いました。また、近年では、AIによる動きの解釈を取り入れたハイブリッド型モーションキャプチャードローイングも登場し、人間と機械の共同生成というテーマが新たに加わっています。



現代における意義と未来展望

現代において、モーションキャプチャードローイングは、身体性、時間性、テクノロジーの交差点に位置する重要な表現領域となっています。人間の存在や行為を、静止した図像ではなく動きの記録として再定義することで、アートにおける「描く」という行為そのものを問い直しています。

今後は、より高精度なセンシング技術、リアルタイム生成AI、仮想空間でのドローイング表現などと結びつき、さらに身体と空間、現実と仮想の境界を流動化させる試みが加速するでしょう。モーションキャプチャードローイングは、未来の身体表現の在り方を示唆する最前線に立ち続けることが期待されています。



まとめ

「モーションキャプチャードローイング」は、身体の動きそのものを描線や形態に変換する革新的な表現技法です。人間の存在感や行為の痕跡を可視化することで、伝統的なドローイングの概念を拡張し、テクノロジー時代の新たな美術表現を切り拓いています。

未来に向けても、モーションキャプチャードローイングは、技術と身体性を結びつける創造的な探求領域として、進化し続けるでしょう。

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