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美術における後期印象派とは?

美術の分野における後期印象派(こうきいんしょうは、Post-Impressionism)は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、印象派の後に登場した美術運動で、印象派の技法を基盤にしつつ、より個人的で象徴的、感情的な表現を追求したスタイルです。特に、色彩の使用法や筆致、形態の取り扱い方において革新を見せました。



後期印象派の起源と背景

後期印象派は、印象派(1860年代?1870年代)の技法と理念を基にして発展しましたが、その特徴は、印象派の軽やかで瞬間的な色使いや筆致を超えて、より深い感情表現やシンボリズムを追求する点にあります。印象派が自然の光を重視したのに対し、後期印象派のアーティストたちは、色彩や形態に対する自己表現を強調しました。

この運動は、1870年代末から1880年代にかけてのフランスで起こり、画家たちはそれぞれ独自のアプローチで印象派の限界を超える方法を模索しました。特に、ポール・セザンヌ、ジョルジュ・スーラ、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホなどが代表的な画家として知られています。



後期印象派の主要な特徴と技法

後期印象派は、印象派の色彩理論や筆使いを受け継ぎつつ、より表現的かつ構造的な絵画を目指しました。印象派が光と色の変化を捉えたのに対し、後期印象派は、色の配置や形の描写を通じて、画面により深い感情や意味を込めました。

例えば、ポール・セザンヌは自然を簡素化した形で描くことにより、立体的な構造を表現し、印象派の流れるようなタッチを超えた安定感と構造感を持つ作品を生み出しました。ジョルジュ・スーラは、点描技法を用いて、色を小さな点の集まりとして描き、視覚的な印象を強調しました。

また、ヴァン・ゴッホは、色彩を感情的に使い、筆致を荒々しく力強くすることで、自身の内面的な情熱や精神的な葛藤を作品に込めました。彼の作品には、明るく強烈な色彩と力強い筆使いが特徴的で、感情的な表現が前面に出ていました。



後期印象派の代表的な画家たち

後期印象派の中でも特に注目すべき画家たちは、各々が独自のスタイルを持ちながら、印象派から派生した新しい表現を試みました。

ポール・セザンヌは、自然を構造的に捉えるために、形を単純化し、色を分解して描くことにより、後のキュビスムや抽象芸術に大きな影響を与えました。

ジョルジュ・スーラは、点描法(ドットによる描画)を使い、視覚的に光と色の相互作用を強調しました。彼の技法は、色を微細な点として配置することで、目に入るときに色が混ざり合って見える効果を狙いました。

ヴィンセント・ヴァン・ゴッホは、色の強烈な対比と荒々しい筆致を使い、内面的な感情を表現しました。彼の作品には、色彩が感情の表現として重要な役割を果たし、筆の運びによって強い動きや情熱が感じられます。



後期印象派の社会的影響と美術史における位置づけ

後期印象派は、単に技術的な革新をもたらしただけでなく、社会的・文化的な意味でも重要な位置を占めています。印象派が広まったことにより、従来のアカデミズム的な技法から解放され、アーティストたちはより自由な表現の場を得ました。後期印象派は、芸術家たちが個人的な感情や表現をより強調し、形式や構造を超えて自らの世界を描くことを可能にしました。

また、後期印象派は20世紀初頭の芸術運動、特にフォーヴィズムやキュビスムに大きな影響を与え、近代美術の発展に欠かせない役割を果たしました。特にセザンヌやヴァン・ゴッホの影響は、モダンアートの基礎を築く上で非常に重要でした。



まとめ

後期印象派は、印象派の影響を受けつつも、より深い感情的表現や構造的なアプローチを試みた画家たちの運動です。ポール・セザンヌ、ジョルジュ・スーラ、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホなどの画家たちは、それぞれ異なる手法で色彩や形を使い、感情や思想を作品に込めました。

後期印象派は、近代美術の礎となる運動であり、今日においてもその革新性と表現力の高さが評価されています。

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