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美術における脱物質化アートとは?

美術の分野における脱物質化アート(だつぶっしつかあーと、Dematerialization Art、Art de la dematerilisation)は、物質的な形態や素材を排除し、芸術表現の本質を精神的、抽象的な領域に求めるアートの一形態を指します。このアートは、物質的な存在や物体の物理的性質に依存せず、思想や概念を重視することを特徴としています。



脱物質化アートの誕生とその背景

脱物質化アートは、1960年代に登場し、特にコンセプチュアルアートやミニマリズムの影響を受けて発展しました。このアート運動の起源は、物質的な表現方法から精神的・知的な表現へと芸術の焦点を移す動きにあります。物質的なものを取り除き、観念や思想、時間や空間を表現の中心に据えることが目的です。

その背景には、物質主義や商業主義への批判があり、芸術を物理的な「作品」ではなく、アイデアやコンセプトとして捉え直す試みがなされました。脱物質化アートは、物質的な価値を超えた精神的価値を重視し、新しい美術の形を追求しました。



脱物質化アートの表現方法と特徴

脱物質化アートでは、物理的なオブジェクトを使用せず、アイデアや言葉、記録、行為そのものをアートの一部とすることが特徴です。たとえば、作家が発表するのは実際の「物体」ではなく、その背後にあるコンセプトや過程、または観察者に与えられる感覚や思考の刺激となるものです。

一部の作品では、観察者の参加や知覚を作品の一部とすることで、作品自体の「物理的な存在」を排除します。このようなアートは、物質的に存在しないため、観賞する人の知覚や思想がその成り立ちに直接関与します。

脱物質化アートは、アートの概念そのものを問うものであり、物理的なものに頼らずとも、視覚や感覚的に意味を持つ作品を創造することを目指します。



脱物質化アートの代表的なアーティストと作品

脱物質化アートの代表的なアーティストには、マルセル・デュシャン、ジョセフ・コスース、ソル・ルウィットなどが挙げられます。デュシャンは「レディ・メイド」という概念を提唱し、既成の物品をアートに転換することで、物質的な価値から解放されたアートの可能性を広げました。

ジョセフ・コスースは、「1つの椅子」という作品で物理的な椅子を展示し、さらにその椅子を示す言葉を併せて展示することで、言葉と物体、そしてその概念がどのように関係するかを問いました。これらの作品は、アートが物理的な存在ではなく、知覚や観念の領域で成り立つことを示しています。

また、ソル・ルウィットは、概念的な指示に従って作られたアートを提供し、アートはその意図や概念によって成り立つという立場を明確にしました。



脱物質化アートの現代美術への影響とその評価

脱物質化アートは、現代美術において大きな影響を与えました。この運動は、アートの物理的な枠組みを超えて、知覚やアイデアそのものを中心に据えることによって、美術の領域を広げました。デジタルアートやインタラクティブアート、パフォーマンスアートなど、物質に依存しない新しい表現方法を切り開きました。

さらに、脱物質化アートは美術界においてその後のコンセプチュアルアートやポストモダンアートの発展に寄与しました。今日では、物質的な作品よりも、思想やアイデアを中心にしたアートが多くの現代アーティストによって追求されています。

脱物質化アートは、アートの意味を拡張し、物質的な存在を超えて、精神的な価値を重視するアートを提供し続けています。



まとめ

「脱物質化アート」は、物質的な存在を排除し、アートの本質を精神的・概念的な領域に求める芸術運動です。この運動は、アートが物理的なものに依存せず、アイデアや概念として成立することを示しました。

その影響は現代美術に深く根付いており、物質を超えた表現方法を探求する多くのアーティストにインスピレーションを与えています。今後も脱物質化アートの概念は、アートの未来における重要な指針として、さらなる発展を見せることでしょう。

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