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美術における彫金とは?

美術の分野における彫金(ちょうきん、Chasing and Repousse)は、金属を彫刻や装飾品に仕立てる技法で、金属の表面に模様や形状を彫り込み、または盛り上げることで、細密で精緻な作品を作り上げます。彫金は、主にジュエリーや装飾品、宗教的な品々、さらには彫刻に広く使用される技法です。



彫金の歴史と起源

彫金の技法は古代から存在しており、エジプトやメソポタミア、ギリシャなどの古代文明で既に使用されていました。特に古代エジプトでは、王族や神殿の装飾品として、金や銀を使った彫金技術が発展しました。中世ヨーロッパやルネサンス時代にも、教会の祭具や宝飾品、宗教的なアイテムが彫金技法を使って製作されました。

日本でも、彫金技法は古代から伝わっており、特に仏教の仏像や仏具、祭具の装飾に用いられました。日本の金工技術は、繊細で美しい模様を彫り込むことが特徴で、細やかな技術が要求されました。

近代に入ると、彫金は装飾芸術やジュエリーデザインの分野でも広く使用されるようになり、現代では芸術作品として、また工業デザインにおいても利用されています。



彫金技法の種類

彫金には、金属の表面を削り取る技法と、金属の表面に金属を盛り上げる技法の2つがあり、それぞれに独特の技術が必要です。

1. 彫り技法(Chasing):彫り技法は、金属の表面に模様や細部を彫り込む技法です。彫刻刀や針などを使って金属を削り、デザインを作り上げていきます。細かい模様や深い彫りを施すことで、金属の表面に立体感やテクスチャーを生み出します。この技法は、主にジュエリーや小さな装飾品に使用されます。

2. 盛り上げ技法(Repousse):盛り上げ技法は、金属の裏面から打ち込んで金属を膨らませ、表面に模様や形状を作り出す技法です。金属の板を叩いて形を作ることで、立体的な模様や彫刻的な表現が可能になります。この技法は、主に大きな装飾品や壁面彫刻、宗教的な祭具などに使用されます。

3. 彫り盛り技法(Chasing and Repousse):この技法は、彫り技法と盛り上げ技法を組み合わせたもので、金属の表面に立体的な模様を施し、細部まで繊細に表現することができます。彫り技法で線を彫り、盛り上げ技法で形を作ることで、非常に精緻な装飾が可能になります。



彫金の用途と作品

彫金は、装飾品やジュエリーだけでなく、様々な分野で使用されています。特に、金属の美しさを活かした芸術的な作品が多く作られています。

1. ジュエリーと装飾品:彫金技法は、ジュエリーのデザインにおいて非常に重要な役割を果たしています。リング、ネックレス、ブレスレットなどのジュエリーは、彫金技法を使って細かい模様や装飾が施され、美しい仕上がりとなります。

2. 宗教的な品々:歴史的には、教会の祭具や仏教の仏像、祭壇の装飾などに彫金技法が使われてきました。特に、金属の光沢や細かい彫り込みが、神聖さや神秘的な印象を与えるために重要視されました。

3. 彫刻と芸術作品:彫金技法は、金属彫刻においてもよく使用されます。彫金によって作られた金属彫刻は、精緻なディテールと立体感を持つ作品となり、美術館や公共の場に展示されることもあります。

4. 工業デザイン:現代では、彫金技法は工業デザインの分野でも使用されており、家具やインテリア小物の装飾にも取り入れられています。精密なデザインが求められる場面で、彫金技法を用いて装飾性を加えることができます。



彫金の現代的な利用と評価

現代においても、彫金技法は高い評価を受けており、アートやジュエリーデザインの分野で重要な技法として使われています。現代の彫金は、伝統的な技法を守りながらも、新しいデザインや技術を取り入れて、さまざまな形で発展しています。

特にジュエリーの分野では、彫金によって生み出される細部の精緻さや質感が、価値のある芸術品として評価されています。彫金アーティストは、金属に込められた表現力を追求し、現代的なアプローチで新しいスタイルのジュエリーを制作しています。

また、彫金技法は、美術館やギャラリーに展示される現代アート作品にも広く取り入れられ、金属の可能性を最大限に活かした創作が行われています。彫金は、単なる金属加工技術にとどまらず、芸術的な表現の手段として重要な位置を占めています。



まとめ

「彫金」は、金属の表面に模様や形状を彫り込み、または盛り上げることで、精緻で美しい金属作品を作り上げる技法です。ジュエリーや装飾品、宗教的な品々、彫刻など、さまざまな分野で使用され、金属の美しさを最大限に引き出す手法として広く評価されています。

現代においても、彫金技法は重要な芸術的手段として活用され、アーティストたちはその技術を駆使して、新しいデザインや作品を生み出し続けています。彫金は、今後も美術とデザインの分野で貴重な役割を果たしていくことでしょう。

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