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美術における特殊メイクとは?

美術の分野における特殊メイク(とくしゅめいく、special effects makeup)は、映画、テレビ、舞台などの映像制作において、キャラクターの外見を劇的に変化させるためのメイク技術です。特殊メイクは、傷、傷跡、老化、怪物、エイリアンなど、通常のメイクでは再現できない特殊な外見を作り出すために使用されます。現代の特殊メイク技術は、素材や技術の進化により、リアルで驚くべき効果を生み出すことが可能になっています。



特殊メイクの歴史と発展

特殊メイクの技術は、映画や舞台芸術の発展とともに進化してきました。映画の初期には、化粧道具やシンプルな素材を使ったメイクが主流でしたが、20世紀初頭から特殊効果の需要が高まり、メイク技術が飛躍的に進化しました。特に、1930年代から40年代にかけて、ハリウッド映画での怪物や異星人、特殊キャラクターの登場が増え、特殊メイク技術の発展に大きな影響を与えました。

映画『フランケンシュタイン』(1931年)の登場や『メトロポリス』(1927年)などでは、初めて本格的な特殊メイクが使用され、人物を劇的に変容させる手法として注目を集めました。1960年代から70年代には、SFX(特殊効果)と呼ばれる技術の一環として特殊メイクが進化し、ジェームズ・キャメロン監督の『ターミネーター』(1984年)や『グリーン・デスティニー』(2000年)などの映画で、よりリアルで詳細なメイクが行われました。

現代では、コンピュータグラフィックス(CG)との融合により、特殊メイクはさらに進化し、映画やテレビ、舞台、テーマパークなどでの使用が拡大しています。



特殊メイクの技法と素材

特殊メイクには、いくつかの技法や素材が使われ、それぞれのシチュエーションに応じて異なる手法が選ばれます。以下は、代表的な技法と素材です:

1. ラテックスとフォーム:ラテックスは、柔軟性があり、顔や体にぴったりとフィットするため、傷や傷跡、肉体的な変化を再現するのに最適です。フォーム素材を使用して、大きな部分を作ることもあります。例えば、顔全体を覆うマスクや、大きな傷の再現などに使用されます。

2. シリコーン:シリコーンは、ラテックスと比べて柔らかく、肌により近い質感を持っています。また、耐久性が高く、表面にリアルなシワや質感を作りやすいため、現代の特殊メイクではシリコーンを多く使用しています。

3. モデル粘土とエポキシ:モデリング粘土やエポキシは、形を作りやすい素材で、型を取る前のスカルプティングに使われます。顔や体の部分に合わせて、細かいディテールを彫刻して、後で鋳型を作成します。

4. 血糊や傷表現:特殊メイクで欠かせないのは、傷や血糊の表現です。フェイクブラッド(人工血)や傷のジェルを使用して、リアルな傷を作り、戦争やホラー映画などでよく使われます。

5. 義肢やプロテーゼ:義肢や体の一部を模したプロテーゼも特殊メイクの一部です。これは、身体に何らかの変化を加えるために使われ、例えば、奇形や異形のキャラクターを作る際に使用されます。



特殊メイクの応用と現代の使用例

特殊メイクは、映画やテレビ、舞台だけでなく、テーマパークやアートインスタレーション、コスプレイベントなど、さまざまな分野で使用されています。現代の特殊メイクは、芸術的な表現として、またテクニカルな技能としても注目を集めています。

1. 映画とテレビ:特殊メイクは、映画やテレビ番組のキャラクターやストーリーに不可欠な要素となっています。例えば、映画『マスク』や『ハリー・ポッター』シリーズでは、キャラクターの顔の変形や、魔法使いやモンスターをリアルに表現するために特殊メイクが使用されています。

2. 舞台とパフォーマンス:舞台では、俳優が変身してキャラクターを演じるために特殊メイクが使われます。これにより、人物を異なる年代や種族に変化させることができます。舞台演劇では、ダイナミックなメイクと衣装の組み合わせで観客に強い印象を与えることができます。

3. テーマパークとエンターテインメント:ディズニーランドやユニバーサル・スタジオなどのテーマパークでは、アトラクションの一環として特殊メイクを活用しています。例えば、怪物やキャラクターのメイクが施されたスタッフが、訪問者に直接迫るショーやイベントに登場します。

4. ホラー映画とファンタジー:ホラー映画やファンタジー映画では、特殊メイクが非常に重要です。ゾンビやヴァンパイア、怪物などのキャラクターは、リアルなメイクによって命を吹き込まれます。例えば、『ジョン・カーペンターのハロウィン』や『トワイライト』など、特殊メイクは映画の雰囲気を作る上で欠かせない要素です。



まとめ

「特殊メイク」は、映像制作や舞台芸術でキャラクターの変身やストーリーのリアルな再現を可能にする重要な技術です。その技法や使用される素材は、時代とともに進化しており、現代の映画やアートにおいて欠かせない要素となっています。

特殊メイクは、ただの化粧にとどまらず、芸術的な表現の一環として、視覚的に強いインパクトを与えるための重要な手段として、今後も多くの分野で活躍し続けることでしょう。

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