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美術における美術設定とは?

美術の分野における美術設定(びじゅつせってい、Art Setting、Mise en art)とは、舞台芸術・映像・ゲーム・アニメーションなどにおいて、空間や小道具、背景、光の演出などを美的・物語的観点から計画・設計する創作活動を指します。作品全体の世界観や雰囲気を視覚的に構築するために欠かせない工程です。



美術設定の起源と発展の背景

美術設定は、もともと舞台演劇や映画の制作現場における舞台美術(ステージデザイン)に端を発します。19世紀後半、写実的な演出が重視されるようになると、物語の背景や道具に写実性や時代考証が求められるようになりました。これにより、舞台空間全体を構成する専門職として「美術」の役割が明確になります。

20世紀には映画の隆盛とともに、撮影セットやロケーションを計画的に構成するための美術部門が発達し、視覚的リアリティを支える基盤となりました。また、アニメーションやゲームといったメディアの登場によって、現実には存在しない架空の世界を構築する力として美術設定の重要性が急速に高まりました。

今日では、創造性と技術の両面が求められる分野として、アートディレクションやコンセプトデザインとも深く関係しながら発展を続けています。



美術設定における主な役割と工程

美術設定は、作品の世界観を視覚的に具体化するための設計図ともいえる重要な工程です。登場人物の暮らす家や町並み、背景の風景、小道具、季節感、時代設定など、すべてが物語の内容と一致するように設計されます。

具体的には、脚本の読解から始まり、作品のテーマやトーンに合わせて色彩計画やレイアウト案を提示します。その後、設定資料の作成、監督や演出家との打ち合わせを重ね、制作チームと連携して映像や舞台へと反映させていきます。

また、アニメーションやゲームの場合には、キャラクターの動きや視点に合わせた背景の整合性を保つために、3Dモデルやレイヤー構造を活用するなど、メディア特有の技術的工夫も必要とされます。



ジャンルごとに異なる美術設定の特色

美術設定は、扱うメディアやジャンルによって求められる視点や技術が大きく異なります。たとえば、時代劇や歴史物では正確な時代考証が求められ、衣装や建築様式、小道具に至るまで厳密な調査が行われます。一方、SFやファンタジーでは、独自の世界観構築が求められ、現実には存在しない空間や文化を創造する想像力が重視されます。

現代劇や日常系アニメでは、観客が共感しやすいリアリティが鍵となり、細部に至る生活感や地域性の表現が重視されます。加えて、ホラーやサスペンスなどのジャンルでは、心理的緊張感を引き出すための色彩や陰影の演出が重要となります。

こうしたジャンルごとの要請に応じて、美術設定は演出と密接に連動しながら、視覚的な語りの手段として機能します。



現代における美術設定の展開と応用

近年のデジタル技術の発展により、美術設定の手法も大きく進化しています。3DCGやバーチャルプロダクションの導入により、制作段階での柔軟性が増し、リアルタイムでの空間演出が可能になりました。また、VRやAR技術を活用した没入型空間設計にも、美術設定の考え方が応用されています。

また、ゲームや映像作品を超えて、展示会、テーマパーク、舞台演出などの分野にも美術設定の概念が広がっており、空間演出の総合芸術としての認識が高まっています。

さらに、AIや自動生成技術の活用によって、背景や小道具の草案作成が加速される一方で、クリエイター独自の審美眼や世界観構築能力がより一層求められる時代に突入しています。



まとめ

美術設定は、物語を視覚的に支える基盤として、舞台芸術や映像、ゲーム、アニメなど幅広いジャンルで活躍する重要な要素です。歴史や技術、文化的背景を踏まえつつ、世界観を具体化する力が作品全体の魅力を左右します。

今後も新たな技術や表現媒体の登場により、美術設定は進化を続け、創作の現場において欠かせない創造的活動としてますます注目されていくでしょう。

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