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美術における釉掛けとは?

美術の分野における釉掛け(うわがけ)は、陶器や磁器の表面に釉薬(うわぐすり)を塗る技法を指します。釉薬は、焼成時に溶けてガラス質の層を形成し、器の表面を滑らかで美しい仕上がりにするとともに、耐水性や耐久性を高めます。釉掛けは、陶芸の重要な工程の一つであり、釉薬の種類や掛け方によって作品の質感や色合いが大きく変わるため、技法として非常に多様で、アーティストの個性を表現する手段としても重要です。



釉掛けの特徴

釉掛けは、陶芸において作品の仕上がりに大きな影響を与える重要な工程です。以下はその特徴です:



1. 釉薬の役割

釉薬は、陶器や磁器の表面に塗ることで、耐水性や耐熱性を向上させ、また美しい光沢や色合いを与える役割を果たします。釉薬にはさまざまな種類があり、その成分や調合によって、色や質感、光沢が大きく変わります。釉薬は、焼成時に溶けて一体化し、ガラス質の層を形成します。この層が、陶器の表面を保護するとともに、美しい仕上がりを実現します。



2. 多様な釉薬の種類

釉薬には、主に次のような種類があります:

  • 透明釉: 釉薬が透明で、陶器の素地や装飾を活かすことができます。
  • 不透明釉: 釉薬が不透明で、鮮やかな色彩や装飾を引き立てることができます。
  • 色釉: 釉薬に色素を加えたもので、さまざまな色合いを楽しむことができます。
  • 金釉: 金属の釉薬を使用し、金色や銀色に輝く仕上がりを目指します。

それぞれの釉薬は、掛け方や焼成の温度に応じて異なる表情を見せ、作品に個性を与える要素となります。



3. 釉薬の掛け方による表現

釉掛けは、釉薬をどのように掛けるかによって、仕上がりの印象が大きく異なります。例えば、釉薬を均等に塗る方法や、部分的に掛ける方法、刷毛を使って不均一に塗る方法など、掛け方によって作品の表情をコントロールできます。これにより、色の濃淡や模様が生まれ、陶芸作品に豊かな表現が生まれます。



4. 焼成の影響

釉掛けは、焼成時に重要な役割を果たします。焼成の温度や時間、酸素供給の量が、釉薬の仕上がりに大きな影響を与えます。例えば、高温で焼成された作品は、釉薬が溶けて光沢が増し、低温で焼かれた作品は、釉薬が柔らかい印象になることがあります。また、焼成時に酸化還元の状態が変化することで、釉薬の色合いや質感が変化することもあります。



釉掛けの技法と表現

釉掛けは、技法としても非常に多様であり、さまざまな表現方法があります。以下はその代表的な技法です:



1. 濃釉(こいゆう)

濃釉は、釉薬を厚く塗り重ねる技法です。これにより、釉薬の色合いや質感が強調され、深みのある色調や光沢が生まれます。濃釉は、特に艶のある仕上がりを目指す際に使用され、作品に豪華さを与えます。



2. 薄釉(うすゆう)

薄釉は、釉薬を薄く塗る技法で、素地の質感や色を活かすことができます。薄釉は、透明感のある仕上がりを目指す際に使用され、素朴で落ち着いた印象を与えることができます。色釉や透明釉を使うことが多いです。



3. 叩き釉(たたきゆう)

叩き釉は、釉薬を塗った後に、特定の部分を叩いて形をつけたり、凹凸を作ったりする技法です。これにより、表面に独特の模様やテクスチャーが生まれ、作品に動きや深みが加わります。叩き釉は、特に現代陶芸でよく用いられ、表現の幅を広げる手段として活用されています。



4. シャドウ釉(しゃどうゆう)

シャドウ釉は、釉薬を部分的に掛ける技法で、陰影やコントラストを強調することができます。部分的に釉薬を掛けることで、作品に動きや立体感が加わり、より深い表現が可能になります。



釉掛けの歴史と文化的背景

釉掛けは、古代の陶器や磁器の制作において重要な技法であり、その起源は中国に遡ります。中国では、漢代から釉薬が使用され始め、唐代には釉掛けの技術が大きく発展しました。特に、中国の陶芸では、釉薬の色や質感に非常に高い技術が求められ、陶器の美しさを引き立てるための重要な要素となりました。



1. 中国の影響

釉掛け技法は、古代中国の陶芸に起源を持ち、その後日本や韓国、東南アジアに伝播しました。中国では、特に唐代の時期に釉薬の種類や技法が多様化し、焼き物の美しさを高めるためにさまざまな実験が行われました。中国の陶芸の影響を受けた日本では、鎌倉時代から室町時代にかけて釉掛け技術が発展し、独自の陶芸文化が確立されました。



2. 日本における釉掛けの発展

日本の陶芸では、鎌倉時代から室町時代にかけて釉掛け技法が広まり、特に茶陶や有田焼などの高級陶器において釉薬の使用が重要となりました。日本では、釉薬の色や質感に対する感性が高まり、特に美しい光沢や質感を持つ釉薬が好まれました。近代には、現代陶芸家が釉掛け技法を革新し、新たな表現方法が開拓されました。



現代陶芸における釉掛けの応用

釉掛け技法は、現代陶芸においても重要な役割を果たしており、新たな表現方法が探求されています。現代陶芸家は、釉掛けを通じて作品に独自の個性や美しさを与えることに挑戦しています。以下はその現代的な応用例です:



1. 現代陶芸における釉掛けの革新

現代陶芸では、釉掛け技法が革新され、伝統的な釉薬の種類に新たな材料や技法が加わることがあります。例えば、釉薬に特殊な金属を加えることで、独自の質感や色合いを生み出したり、現代的なアートの要素を取り入れた釉掛けが行われています。これにより、陶芸はより多様で独創的な作品を生み出しています。



2. アートとしての釉掛けの表現

現代陶芸では、釉掛けは 単なる技術にとどまらず、アートの一部として捉えられています。陶芸家は釉薬を使って、表現力豊かなテクスチャーや色彩を作り出し、作品に個性的な表現を加えています。釉掛けは、陶芸作品に対する視覚的なインパクトを高めるための重要な手段として、現代アートの中で注目されています。



まとめ

釉掛けは、陶芸の中でも非常に重要な技法であり、釉薬を使って作品の美しさや機能性を高める手段として古くから利用されています。釉薬の種類や掛け方によって、陶器や磁器の色や質感が大きく変わり、その作品に個性や深みが生まれます。

現代の陶芸家たちは、伝統的な釉掛け技法を活かしつつ、新しい表現を追求しており、釉掛けは今後も陶芸の中で重要な役割を担い続けることでしょう。

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