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飲食業界におけるISO22000(食品安全マネジメントシステム)とは?

飲食の分野におけるISO22000(食品安全マネジメントシステム)(あいえすおーにーにーぜろぜろ、ISO 22000: Food Safety Management System、Systeme de management de la securite des denrees alimentaires)とは、食品の安全性を確保するための国際規格であり、飲食業界をはじめとするすべての食品関連事業者が、食品による健康被害を未然に防ぐためのマネジメント体制を構築・運用する際の基準を示したものです。

ISO22000は、国際標準化機構(ISO)によって2005年に初版が発行され、2018年に最新改訂版(ISO 22000:2018)がリリースされました。この規格は、食品の原材料調達から調理・加工・提供・流通に至るまでのすべての工程において、「食品安全に対する継続的なリスク評価と管理」を実現することを目的としています。

飲食店においてISO22000を導入することで、HACCPの原則を内包しつつ、さらに組織全体で食品安全文化を構築し、責任の所在を明確にした衛生管理が可能になります。HACCPが「現場での衛生管理」にフォーカスしているのに対し、ISO22000は経営層から現場までの全体的な仕組みに着目したシステムといえます。

また、ISO22000の認証を取得することは、企業としての社会的信頼の証明ともなり、海外進出時の商談や、取引先との契約上の要件となることもあります。グローバル化が進む現在、特に食品輸出や多国籍顧客を対象とする飲食事業者にとって、導入メリットは非常に大きいものとなっています。

ISO22000の導入は義務ではありませんが、飲食業界の信頼性向上、トラブル発生時のリスクマネジメント、従業員の衛生意識向上など、多方面での効果が期待されており、日本国内でも導入事例は増加傾向にあります。

このように、ISO22000(食品安全マネジメントシステム)は、食品の安全性を確保し、持続可能な飲食経営を支えるための重要な国際規格であり、今後さらに注目される制度といえるでしょう。



ISO22000の歴史と制度の背景

ISO22000の誕生は、食品安全に関する国際的な問題意識の高まりが背景にあります。1990年代以降、BSE(牛海綿状脳症)や鳥インフルエンザ、O-157などの食中毒事件が世界各地で発生し、食品への信頼性が大きく揺らぎました。

このような中で、国際的な食品サプライチェーン全体を網羅した、共通の衛生管理基準が求められるようになり、2005年にISO(International Organization for Standardization)が「食品安全マネジメントシステム」として発表したのがISO22000です。

ISO22000は、HACCPの原則と手順を含みながらも、ISO9001(品質マネジメントシステム)に準じたPDCAサイクル(計画・実行・確認・改善)を基本構造とすることで、食品安全に関わるあらゆる組織が、業務改善とリスク管理を継続的に行えるよう設計されています。

2018年には大幅な改訂が行われ、「ハイレベルストラクチャー(HLS)」と呼ばれるISO共通の骨組みが採用され、他のISO規格(ISO9001やISO14001など)との統合運用がしやすくなりました。

この改訂により、食品業界のみにとどまらず、飲食店や給食事業者宿泊施設のレストラン部門デリバリー業者など、より幅広い業態にとって導入しやすい規格となっています。



ISO22000の仕組みと飲食業界における活用方法

ISO22000は、食品安全に関するリスクを管理するだけでなく、組織のトップマネジメントから現場のスタッフまで、全体として安全意識を高める仕組みです。以下の主要な要素がシステムに組み込まれています。

  • リーダーシップと組織体制:経営層の関与が義務づけられ、食品安全方針の策定やリスクに対する責任分担が明確になります。
  • リスクと機会の特定:外部環境・内部状況を分析し、食品安全に影響する要因を可視化します。
  • PRP(前提条件プログラム):衛生環境の整備(設備管理、洗浄、異物混入防止など)を行います。
  • HACCPプラン:危害要因分析と重要管理点(CCP)を含む手順を策定し、実施・記録・評価を行います。
  • 改善・是正処置:問題が起きた際の対処や再発防止策の導入が求められます。

飲食店での導入例としては、以下のような効果が見込まれています:

  • 厨房内の動線設計の見直しにより交差汚染リスクを低減
  • 衛生管理のチェックリストと教育プログラムの統合運用
  • 食材のトレーサビリティ(追跡可能性)確保
  • クレーム対応時の調査・報告体制の整備

これにより、日々の営業の中での食品安全管理が形式的なものではなく、実効性をもった運用として根づくようになります。



ISO22000の導入メリットと今後の展望

ISO22000の導入によって得られる最大のメリットは、食品安全に関する「信用の可視化」です。第三者機関による認証を受けることで、顧客や取引先に対して「自社の衛生管理が国際基準に準拠している」ことを証明できます。

特に大手流通企業との取引や、海外展開を検討している飲食事業者にとっては、ISO22000認証が「信頼のパスポート」となることも多く、企業ブランドの価値向上にもつながります。

また、社内体制の整備や記録の見える化によって、スタッフ間の共通理解や意識の統一が生まれ、現場でのオペレーションの標準化・効率化が促進されます。

一方で、導入にあたっては一定のコストと人的リソースが必要です。そのため、ISO22000の導入を検討する際には、専門のコンサルタントの支援を受けたり、ITツールを活用して記録業務を効率化したりすることが推奨されます。

今後は、ISO22000と他の国際認証(例:FSSC22000、ISO9001など)を統合管理する動きや、AI・IoT技術を活用した食品安全の高度化が進むと予想されており、ISO22000は時代の変化とともに、ますます重要性を高めると考えられます。



まとめ

ISO22000(食品安全マネジメントシステム)は、飲食業界における衛生管理を企業全体でシステム化し、持続可能で信頼性の高い経営を実現するための国際規格です。

HACCPの考え方をベースとしつつ、経営層の関与やリスク管理の仕組みを取り入れたこの制度は、食品の安全性を担保するだけでなく、企業価値の向上にも寄与します。

今後、食品の安心・安全に対する社会的ニーズがさらに高まる中で、ISO22000の導入は、飲食事業者にとって大きな競争力となるでしょう。

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