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飲食業界におけるアイリッシュパブとは?

飲食の分野におけるアイリッシュパブ(あいりっしゅぱぶ、Irish Pub、Pub Irlandais)は、アイルランドに起源を持つ伝統的なパブ(公共の飲食店)スタイルであり、独自の文化や雰囲気を持つ飲食業態の一つです。クラフトビールやウイスキー、シンプルながら味わい深いパブフードが特徴で、世界各地で親しまれています。

英語表記は「Irish Pub」、フランス語表記では「Pub Irlandais」とされ、どちらもアイルランド風の居酒屋・社交場を意味します。アイルランド発祥であるため、インテリアにはケルト文化を彷彿とさせる装飾や、木製のバーカウンター、暖炉風の内装などが取り入れられています。

飲食業界におけるアイリッシュパブは、単なる酒場を超えた「体験型飲食空間」としての役割を担っており、食事・音楽・会話・スポーツ観戦など、五感で楽しむ「場の提供」がコンセプトです。とりわけ日本国内では、欧米スタイルを好む若者層や外国人観光客を中心に、都市部を中心に広がりを見せています。

料理はフィッシュ&チップスやシェパーズパイなど、伝統的な英国・アイルランド料理を中心に構成される一方で、日本風にアレンジされたメニューも多く、ローカル市場に適応した柔軟な業態でもあります。



アイリッシュパブの歴史と文化的背景

アイリッシュパブの起源は、アイルランドにおける「パブリック・ハウス(Public House)」にさかのぼります。これは、18世紀以降に一般市民が集うことのできる飲食空間として機能していたものであり、地域コミュニティの中心としての役割を果たしていました。

アイルランドのパブは単にお酒を飲む場ではなく、地域の情報交換・交流・娯楽の中心でもありました。音楽(特にアイリッシュミュージック)やダンス、スポーツ観戦、時には詩の朗読会なども行われてきました。

20世紀後半になると、アイルランドからの移民を通じてこの文化がアメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリス本土などに広まりました。さらに1990年代以降、アイルランド政府と企業が「アイリッシュパブのグローバル展開」に乗り出し、標準化されたパブ内装セットの輸出を行ったことで、世界各地でアイリッシュパブが展開されるようになりました。

日本への上陸は1980年代末から1990年代初頭で、東京や大阪の繁華街を中心に店舗数が拡大しました。特に2000年代以降は、外国人居住者の増加やインバウンド観光需要の高まりとともに、その数と人気を伸ばしています。



アイリッシュパブの特徴と飲食提供スタイル

アイリッシュパブの最大の特徴は、「飲食空間そのものが一つの物語を持っている」という点です。単に食事をする場所ではなく、雰囲気・音楽・接客など、すべてが一体となった「体験型業態」として構成されています。

主な特徴は以下のとおりです:

  • ドリンクの中心はギネスビール:アイルランドの黒ビール「ギネス」が定番。他にもキルケニー、マーフィーズ、アイリッシュウイスキーなどが人気。
  • 定番メニュー:フィッシュ&チップス、シェパーズパイ、ソーセージ&マッシュ、ビーフ&ギネスシチューなど。
  • セルフスタイルの要素:キャッシュオン(注文時支払い)やカウンター注文が基本のスタイル。
  • ライブミュージックやスポーツ観戦:特にサッカーやラグビーの国際試合開催日は盛り上がりを見せる。
  • インテリアと演出:木目調の家具、レンガの壁、ステンドグラス、アンティーク装飾で雰囲気を演出。

また、日本の飲食業界では、アイリッシュパブを「2軒目需要」や「ノンジャンル飲食の融合空間」として捉え、ビールバーやダイニングバーと組み合わせたハイブリッド業態として運営される例も増えています。



アイリッシュパブの現在と将来展望

近年、アイリッシュパブは都市部を中心に定着し、外国人観光客や海外留学生などのインバウンド層にも人気の高い業態として認識されています。特に東京・渋谷、六本木、新宿、大阪・心斎橋、福岡・天神エリアでは、週末や国際イベント時には多国籍な来客でにぎわいを見せています。

また、Z世代やミレニアル層に向けて、SNS映えする内装、DJイベントの開催、クラフトビールの提供など、新たなアプローチを行う店舗も増えています。

将来的には以下のような展望が期待されています:

  • 多言語対応の強化:訪日観光客の増加に対応し、英語メニューや外国人スタッフの採用を進める。
  • クラフトビール市場との融合:地元醸造所とのコラボメニューやイベント開催。
  • 地域密着型パブの増加:都市部だけでなく、地方都市への進出とローカルコミュニティ形成。
  • オンライン連動イベント:スポーツ中継やライブ配信を通じてリアル&デジタルの融合を図る。

反面、課題としては「深夜営業における騒音」「アルコール依存リスクの啓発」「法規制との調和」なども挙げられ、持続可能な経営のためには社会的責任の意識も求められます。



まとめ

アイリッシュパブは、飲食という枠を超えて、文化・音楽・人と人とのつながりを体現する社交空間として、世界中で愛され続けています。

飲食業界においては、伝統を活かしながらも現代のライフスタイルに合わせて進化し、多様なニーズに応える柔軟な業態として定着しています。今後も、地域性やデジタル化との融合を図りながら、新しい「パブ文化」の創造に寄与していくことでしょう。

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