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飲食業界におけるアクアパッツァとは?

飲食の分野におけるアクアパッツァ(あくあぱっつぁ、Acqua Pazza、Eau folle)は、イタリア南部・ナポリを起源とする魚介料理で、白身魚を中心に、トマト、オリーブ、ケッパー、ニンニク、パセリなどの具材を白ワインと水で煮込んで作られる郷土料理の一つです。イタリア語で「アクア」は「水」、「パッツァ」は「狂った」を意味し、直訳すると「狂った水」となりますが、これは料理中に魚の旨味が溶け出し、スープのように味わい深くなることを象徴的に表現したネーミングとされています。

日本においてアクアパッツァは、イタリア料理を提供するレストランだけでなく、カジュアルなビストロや家庭料理としても親しまれており、特に魚介の持ち味を生かしたヘルシーで華やかな一品として人気です。見た目の美しさや調理法のシンプルさもあり、調理初心者でも挑戦しやすいメニューとされています。

また、低カロリー・高たんぱくな食材を使うことから、健康志向の消費者やダイエット中の方、さらにはグルテンフリー志向のニーズにもマッチしており、近年の「地中海食ブーム」と相まって、飲食業界におけるメニューの定番化が進んでいます。

なお、アクアパッツァはアラカルト料理としてはもちろん、コースメニューの魚料理や、イベント料理、ランチメニューの主菜としても活用され、季節の魚介を用いたアレンジレシピなど、シェフの創意工夫が活かされる一皿として重要な位置を占めています。



アクアパッツァの歴史と語源

アクアパッツァはイタリア南部、特にナポリ周辺やアマルフィ海岸の漁村を発祥とする料理です。もともとは地元の漁師たちが、その日獲れた新鮮な魚を海水で煮て食べたのが始まりとされており、極めて素朴な料理でした。

名前の由来である「Acqua Pazza(アクア=水、パッツァ=狂った)」には諸説ありますが、料理中に煮汁がぶくぶくと泡立ち、まるで水が“狂って”いるように見える様子からその名がついたという説が有力です。また、通常のスープとは異なり、魚介の旨味が強く染み出した白濁した煮汁が、風味豊かで「ただの水とは思えない味わい」という意味も含まれているといわれます。

20世紀後半に入ると、イタリア国外にもその名が知られるようになり、特に日本では1990年代のイタリアンブームの中でレストランのメニューに採用され、著名シェフによるアレンジレシピなどが話題を呼びました。

また、日本においては、イタリアン料理店「アクアパッツァ(Acqua Pazza)」が東京・広尾にオープンしたことで、この料理の名称自体が一般にも広く知られるきっかけとなりました。



アクアパッツァの特徴と調理法

アクアパッツァの最大の特徴は、シンプルでありながら素材の旨味を最大限に引き出す調理法にあります。主に以下のような工程で作られます:

  1. 白身魚(スズキ、タイ、カサゴなど)をオリーブオイルで軽くソテーする。
  2. そこにミニトマト、オリーブ、ケッパー、ニンニク、イタリアンパセリなどの具材を加える。
  3. 白ワインと水を加えて中火で煮込み、魚にしっかりと火を通す。
  4. 最後に塩・こしょうで味を調え、皿に盛り付けて完成。

ポイントは「水分とワインのバランス」「煮込みすぎないこと」。魚に火が通った段階で仕上げることで、身がふっくらと仕上がり、煮崩れも防げます。

また、旬の魚介や野菜を使うことで、季節感のあるメニューにもなります。魚の種類やスープの濃度を変えることで、多様なバリエーションが可能なため、飲食店では定番化しつつも「日替わりアクアパッツァ」などとして提供するケースも見られます。

仕上げにバゲットやパスタを添えることで、煮汁(ブロード)を余すことなく楽しめるのもこの料理の魅力です。



飲食業界におけるアクアパッツァの活用と展望

近年、飲食業界におけるアクアパッツァの需要は着実に高まっており、特に以下のような点で注目されています:

  • 健康志向の高まりへの対応:油を控えめにしつつも満足感が高いメニュー。
  • 見た目の華やかさ:野菜や魚の彩りが豊かで、SNS映えする。
  • 素材のアピールに適している:地元産の魚やオーガニック野菜など、産地直送食材のプロモーションにも効果的。
  • ワインとの相性が良い:ペアリング提案がしやすく、コースメニューへの展開が可能。

さらに、コロナ禍以降に増加した「家庭向けミールキット」や「冷凍惣菜」といった業態でも、アクアパッツァは手軽に調理できる本格メニューとして活用が進んでいます。

また、最近ではプラントベース食材や代替魚(植物性のフィッシュプロダクト)を使用したヴィーガン・アクアパッツァなども登場し、より多様なライフスタイルや食の価値観に対応する料理として進化を遂げています。



まとめ

アクアパッツァは、素材の魅力を活かしながら健康的で華やか、かつ汎用性の高い料理として、飲食業界において重要なポジションを占める存在です。

その背景には、イタリアの漁師料理という素朴なルーツがありながら、時代とともに洗練され、多様なシーンにマッチする柔軟性を持っていることが挙げられます。

今後も、地域食材の活用やサステナブルな食の提案、そしてヴィジュアル性を活かしたマーケティングなど、さまざまな可能性を秘めた料理として、アクアパッツァの活躍は広がっていくでしょう。

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