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飲食業界におけるアクアリウムレストランとは?

飲食の分野におけるアクアリウムレストラン(あくありうむれすとらん、Aquarium Restaurant、Restaurant Aquarium)は、水族館のような大型水槽や海洋生物を内装に取り入れた飲食店を指します。訪れる人々に食事と同時に幻想的な海の世界を楽しんでもらうことを目的とし、五感すべてに訴える体験型ダイニングとして世界的に注目を集めています。

このスタイルのレストランでは、壁面全体を覆うような巨大な水槽に熱帯魚やサメ、クラゲなどが泳ぐ姿を眺めながら、コース料理やアラカルトを楽しむことができます。内装や照明、音楽なども海中の雰囲気に調和させ、まるで水族館の中で食事をしているような没入感を演出します。

アクアリウムレストランは、観光地や都市部の高級ホテル内に併設されることが多く、特別な記念日やデート、インバウンド観光客向けの非日常体験としてのニーズが高まっています。また、近年ではSNS映えするスポットとして若年層を中心に支持されており、プロモーション効果も非常に高い業態とされています。

このような業態は、食事という基本的な価値提供に加えて「空間体験」を重視する飲食トレンドの象徴とも言え、飲食業界全体のエンタメ化やブランディング手法の進化を象徴する存在です。



アクアリウムレストランの歴史と語源

「アクアリウム(Aquarium)」という語はラテン語の「aqua(水)」に由来し、19世紀中頃から「観賞用の水槽」や「水中生物の展示施設」を意味する言葉として使われてきました。もともとは家庭用の小型水槽からスタートし、やがて公共の水族館施設へと拡張されていきました。

このアクアリウムをレストランに融合させる試みは、1990年代後半にアメリカやドバイなどで始まりました。代表例として、テキサス州ヒューストンの「Aquarium Restaurant」やドバイの高級ホテル「バージ・アル・アラブ」にある水中レストラン「Al Mahara」などが挙げられます。

日本国内では2000年代初頭から登場し、特に東京・大阪・福岡などの都市圏で人気を博しました。国内初期のアクアリウムレストランは、熱帯魚やクラゲなどをインテリアに取り入れた演出型ダイニングバーとしての性格が強く、比較的小規模な形で展開されていました。

しかし近年では、エンターテインメント要素をさらに強化し、まるで水族館の中でディナーをするかのような壮大な空間設計を取り入れる店舗も登場しています。



飲食業界におけるアクアリウムレストランの活用と特徴

アクアリウムレストランは単なる飲食の場ではなく、「空間価値の創出」に重きを置いた業態です。以下にその特徴と活用事例を詳しく紹介します。

● 視覚的演出による顧客体験の向上
巨大水槽や幻想的なライティングを活用し、まるで海底にいるかのような雰囲気を演出。料理そのものの演出だけでなく、空間そのものがエンターテインメントとして機能します。

● SNS・口コミを活用したプロモーション
「映える」写真を撮影しやすい設計となっているため、インスタグラムやTikTokなどを通じての拡散効果が高く、自然発生的なプロモーションツールとなっています。

● 記念日・非日常シーンでの高単価戦略
誕生日やプロポーズ、記念日ディナーなど、特別な日に利用されるケースが多いため、平均客単価が高く設定できるのも魅力です。

● マーケティングにおける差別化要素
一般的なレストランとは一線を画す非日常的な空間は、同業他社との差別化に大きく寄与します。

● 環境演出と食事の連動
海産物メニューや「海」をテーマにしたコース料理を提供することで、視覚と味覚が連動した五感型の体験価値を提供できます。

近年では、アクアリウムを取り入れた和食店やベーカリーカフェなど、新しい形態への応用も増えており、業態の拡張性にも優れています。



課題と今後の展望

一方で、アクアリウムレストランの運営にはコストやメンテナンス面の課題も存在します。大型水槽の維持には専門知識が求められ、水質管理や生体の健康管理、清掃など、通常の飲食店とは異なる運用体制が必要です。

また、生体を取り扱う関係上、動物福祉や倫理観への配慮も求められます。近年ではSDGs(持続可能な開発目標)に基づく店舗運営や、生態系への負荷を軽減するためのガイドラインに準拠した設計が求められる傾向にあります。

しかしながら、こうした制約をクリアしたアクアリウムレストランは、今後も体験型飲食の中核を担う存在として成長が期待されます。特に、コロナ禍以降の「リアル体験」への渇望を背景に、非日常空間における食事体験への需要はさらに高まると考えられます。

今後はAR(拡張現実)やデジタルアートを活用した「仮想アクアリウム」との連携、インバウンド対応の強化、さらには地方観光資源とのコラボレーションなど、多方面においてアクアリウムレストランの可能性が広がっていくことでしょう。



まとめ

アクアリウムレストランは、視覚と味覚の融合により「食+空間」の新しい価値を創出する飲食業態です。特別な記念日や観光需要に応える体験型ダイニングとして、エンターテインメント性とブランド力を兼ね備えた注目の分野です。

今後は、持続可能性やデジタル技術との融合を進めながら、さらに多様な展開が期待されることでしょう。飲食業界において、単なる食事ではなく“記憶に残る体験”を提供する手段として、アクアリウムレストランはますます重要な存在となっていきます。

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