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飲食業界におけるあらごしとは?

飲食の分野におけるあらごし(あらごし、Aragoshi、Passe grossierement)は、食材を細かくすり潰したり裏ごししたりする際に、あえて目の粗いふるいや裏ごし器を使って、素材の食感や粒感をある程度残した状態に仕上げる技法を指します。完全に滑らかにする「なめらかごし」とは対照的に、食材本来の風味や質感を活かした料理表現として重宝される方法です。

あらごしは、和食から洋食、デザートまで幅広く活用されており、例としては、みそ汁に使う田舎みそ、果肉を残したピューレ、手作りドレッシングやソース、あんこ、さらには「あらごし梅酒」のようなドリンクにもこの技法が応用されています。

英語では「rough strained」や「coarsely mashed」、フランス語では「passe grossierement」「puree avec texture」と表現され、特に製菓・調理の専門現場で重要な役割を担う技術用語のひとつです。

この記事では、あらごしの調理技法としての意義、その歴史的背景や言葉の由来、現代の飲食業界での活用例などについて、専門的な視点から詳しく解説いたします。



あらごしの歴史と語源

「あらごし」という言葉の語源は、日本の伝統的な調理道具である「裏ごし器(裏漉し器)」に由来しています。もともと裏ごしとは、煮た食材や練った材料をこして滑らかにする工程を指しますが、その中でも目の粗い裏ごし器を使って粒を意図的に残す手法が「あらごし」です。

江戸時代の料理書『料理物語』や『豆腐百珍』などには、豆腐や野菜を裏ごしする工程の記載が見られます。これらの中でも特に精進料理では、素材を活かすために「あらごし」が使われる場面が多く、自然な食感を大切にする日本料理の美学を体現する技法の一つとして発展しました。

また、近代に入ってからは、西洋料理でもポタージュスープやムース、パテなどでこの技法が応用されるようになり、各国の食文化の中で「テクスチャー(食感)」を残す表現として確立していきました。



あらごしの調理技術と応用

あらごしの調理法は、以下のような基本工程を経て実践されます。

  1. 素材の下処理:食材を加熱する、柔らかく煮るなど、こしやすくするための準備が必要です。
  2. 裏ごし器やふるいの選定:あらごし用には、網目の粗い道具(#20?#40程度の目)を使用します。
  3. こし方:押しつぶす力加減を調整し、粒が残るように通すのがポイントです。ブレンダーやフードプロセッサーを使う場合も、完全には攪拌せずパルスモードなどで粗めに仕上げる工夫がなされます。

この手法が活かされる料理には以下のようなものがあります:

  • あんこ:こしあんよりも粒が残る「あらごしあん」は、つぶあんのバリエーションとして人気です。
  • 果実ソース:いちごやマンゴーなどのフルーツピューレをあらごしにすることで、見た目と味に立体感が生まれます。
  • 野菜スープ:ポタージュやミネストローネにおいて、野菜の食感をあえて残すことで食べ応えを演出できます。
  • 調味料:ドレッシングやサルサソースで野菜や果実を粗く刻み、あらごしの状態にすることで風味が引き立ちます。

さらに、近年人気のあらごし果実酒やスムージー、クラフトジャムなどでは、「素材の美味しさをそのまま味わえる」という点で、この技法が商品価値を高める要素となっています。



現代飲食業界におけるあらごしの役割と価値

現代の飲食業界において、あらごしという技法は「手作り感」「素材重視」「食感演出」の象徴として、極めて高い評価を受けています。

特に次のような場面で活用されています:

  • レストランのデザートプレート:ベリーのあらごしソースで自然な色合いと粒感を加え、プレート全体の印象を豊かにします。
  • ドリンクメニュー:「あらごし桃ジュース」や「あらごし梅酒」など、果実感を残したドリンクは、視覚・味覚の両面で消費者に訴求力を持ちます。
  • ベーカリー商品:手作りのあらごしジャムやフィリングを使うことで、自然派志向の消費者にアピールできます。

また、和食・洋食問わず、プロの料理人は「すべてを滑らかにするのではなく、粒感をどう活かすか」という視点で料理を設計します。これは調理の技術力だけでなく、感性と設計力も試される要素です。

近年では、ヴィーガンやグルテンフリー商品など、よりナチュラルな食体験を求める需要が増えており、あらごしの技法はその流れにマッチしています。



まとめ

あらごしとは、素材の味わいや風味、自然な食感を活かすために、粗めに裏ごしする日本料理由来の技法であり、現代の飲食業界においてもその活用範囲は非常に広がっています。

単なる下ごしらえではなく、「あえて残す」ことによる表現力として、和洋中すべてのジャンルで再評価が進んでおり、素材主義や職人技が求められる現在の飲食トレンドにも適合しています。

今後も、あらごしの技術を活かした商品やメニュー開発は拡大していくと予想され、「食感の演出」という観点からさらなる進化が期待されます。

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