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飲食業界におけるいし焼きとは?

飲食の分野におけるいし焼き(いしやき、Ishiyaki、Cuisson sur pierre)は、加熱した天然石または人工石の上で食材を焼き上げる調理方法、またはその提供スタイルを指します。主に肉や魚介類、野菜などを対象とし、食材が持つ本来の旨味を閉じ込めながら加熱できることから、和食や鉄板焼き、創作料理の現場で高い評価を得ています。

この「いし焼き」という手法は、遠赤外線効果を活用することで、表面を香ばしく、中をふっくらジューシーに仕上げられる点が特長です。また、熱源からの距離が近く、かつ均一な熱を加えられるため、焼きムラが少なく、素材の水分と旨味を逃がさないといった調理効果が得られます。

飲食業界では、客席で加熱済みの石板や溶岩石プレートを用いて、顧客自身が焼きながら食べるスタイルが人気で、ライブ感や演出性の高い提供方法としても注目されています。また、油をほとんど使用しないため、ヘルシー志向の高い現代の飲食ニーズとも親和性が高いです。

英語では「Stone Grill」や「Hot Stone Cooking」、フランス語では「Pierre chaude」や「Cuisson sur pierre」などと訳され、ヨーロッパを中心に日本食レストランでも取り入れられる機会が増えています。

つまり、「いし焼き」とは、“熱した石の力で素材本来の味を引き出す”古くて新しい加熱調理技術であり、料理のクオリティ向上と顧客体験の両方を実現する手法として、飲食業界において高い付加価値を持っています。



いし焼きの歴史と文化的背景

いし焼きの原型は、古代から存在する“石を熱して調理に用いる”という極めてプリミティブな手法にさかのぼります。日本でも、縄文時代の「石蒸し」や「石焼き料理」が存在し、漁村では浜辺で熱した石に魚介を置いて焼く習慣が見られました。

現代の飲食業界におけるいし焼きは、主に1970年代?80年代に登場した「石焼ビビンバ」や「溶岩石焼肉」などの韓国料理系メニューが火付け役となり、そこから和食や居酒屋業態にも波及しました。さらに、2000年代以降はライブキッチンやテーブル調理の演出要素として再評価され、石焼ステーキや石焼シーフードなど、さまざまなジャンルで活用されるようになりました。

また、温泉地や山岳地帯では、地元の溶岩石や玄武岩などを活かしたご当地料理として提供されることも多く、地域資源の活用と食体験の観光資源化が進められています。



いし焼きの調理技術と提供スタイル

いし焼きに使われる石材には、耐熱性・遠赤外線効果・蓄熱性などが求められます。主に使用されるのは以下のような素材です:

  • 溶岩石(富士山・桜島など):気泡が多く軽量で、熱伝導がゆるやか
  • 花崗岩:蓄熱性が高く、長時間熱を保持可能
  • ブラックストーン・鉄平石:見た目も美しく、インテリア性が高い

調理スタイルとしては、以下のようなバリエーションがあります:

1. カウンター・テーブル提供型
あらかじめ高温で加熱した石板を客席に運び、顧客が目の前で焼く形式。体験型提供として人気です。

2. キッチン仕上げ型
厨房内で石の上で加熱・仕上げを行い、そのまま提供する形式。余熱調理が続く演出として使われます。

3. 石鍋・陶板スタイル
石焼ビビンバや石焼麻婆豆腐など、器そのものが石製で、そのまま火にかけるメニュー。

4. 焼肉・鉄板焼の応用
脂が落ちても煙が少ないことから、焼肉や海鮮焼きで重宝され、ヘルシー志向のメニューとして活用されています。

5. 石焼デザート
石の上でパンケーキを焼いたり、アイスクリームとの温冷コンビネーション演出など、スイーツ分野への応用も進んでいます。



飲食業界における価値と今後の可能性

いし焼きは、単なる調理技法にとどまらず、顧客の“体験価値”と“健康志向”に応える仕掛けとして、飲食業界での導入が広がっています。

【導入のメリット】

  • 演出性・ライブ感:石の上で焼き上がる様子や音・香りによる五感への訴求
  • 低油調理:素材の持ち味を引き出しつつ、余分な脂を落とすことでヘルシーに
  • 高温調理:短時間で火が通るため、ジューシーかつ衛生的に仕上がる
  • メンテナンスのしやすさ:石材は耐久性があり、洗浄・再利用も比較的容易

【今後の展望】

  • ヴィーガンメニューとの融合:豆腐ステーキ、野菜グリルなど、植物性食材にも対応可能
  • 地域素材との連携:地産石材やご当地素材と組み合わせた地域活性型メニュー
  • フードテックとの連携:温度センサー内蔵石板や、IoT対応ヒートユニットとの組み合わせ


まとめ

いし焼きは、遠赤外線による高温調理と視覚・聴覚・嗅覚に訴える演出を兼ね備えた、飲食業界における革新的かつ原始的な調理手法です。

現代においては、ヘルシー志向や食のエンターテインメント性が求められる中で、いし焼きはその魅力を再評価されており、今後さらに多様な業態・メニューとの組み合わせによって進化していくことが期待されています。

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