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飲食業界におけるいちご煮とは?

飲食の分野におけるいちご煮(いちごに、Ichigo-ni、Soupe aux oursins et abalone)とは、青森県八戸市およびその周辺地域の郷土料理であり、ウニ(うに)とアワビ(あわび)を主な具材とする潮汁(うしおじる)風のスープ料理を指します。その名の由来は、仕上がったスープの中に浮かぶウニが、朝露に濡れたいちご(野いちご)に見えたことから付けられたと言われており、名前とは裏腹に果物の「苺」とは無関係です。

いちご煮は、海の恵みを贅沢に使った繊細な味わいの一品であり、家庭料理というよりも、冠婚葬祭や特別なおもてなしの場で振る舞われる“ごちそう”として位置づけられています。現在では、レトルトパウチや缶詰製品としても商品化されており、観光客向けの土産品や飲食店メニューとしても広く認知されています。

この料理は、だしに昆布やアワビの煮汁を用い、そこへ生のウニとスライスしたアワビを加えて短時間で仕上げるのが一般的な調理法です。上品な香りと海の旨味を最大限に引き出した透明なスープは、全国の料理人にも高く評価されており、和食の前菜や一品料理として提供されるケースも増えています

英語では「Ichigo-ni (Sea Urchin & Abalone Soup)」、フランス語では「Soupe claire a l’oursin et a l’ormeau」などと表現され、和食文化の紹介や高級割烹のコースでも登場することがあります。

つまり、「いちご煮」とは、“北の海の宝を一杯に閉じ込めた清澄な海のスープ”であり、日本の郷土料理の中でも特に繊細かつ高級感を持つ逸品として、飲食業界においても重要な地位を占めています。



いちご煮の歴史と名前の由来

いちご煮の発祥は、青森県八戸市およびその近隣の三陸沿岸部とされています。もともとは地元漁師たちの間で、水揚げされたばかりのウニやアワビを使い、船上や浜辺で手早く作られた漁師料理でした。

その後、明治時代以降、郷土色の濃い料理として地域の祝宴や法要で提供されるようになり、昭和期には地元料亭の看板メニューとしても定着しました。八戸の夏の朝、食卓に並べられたこの料理の中で、スープに浮かぶウニが朝露をまとった野いちごのように見えたという詩的な表現が、「いちご煮」という名称の由来となったと言われています。

つまり、「いちご煮」は単なる料理名ではなく、自然や季節感に対する繊細な感性を表現した、日本的な美意識が込められた名称でもあるのです。



いちご煮の調理法と提供スタイル

いちご煮は、非常にシンプルながらも素材の選定と加熱のタイミングに繊細な技術を要する料理です。

【基本の材料】

  • 生ウニ(ムラサキウニやバフンウニ)
  • アワビ(薄切りにして使用)
  • 昆布だし(一番だしを使用するのが一般的)
  • 日本酒・塩(調味は極めて控えめ)
  • 青じそ(仕上げの香りづけとして刻みを加える)

スープを沸かした後、アワビを軽く煮て旨味を抽出し、最後にウニを加えてすぐに火を止めます。ウニを煮すぎると苦味やえぐみが出るため、余熱でふんわり仕上げることが美味しく作るコツです。

提供スタイルとしては、蓋付きの椀や湯呑み型の器で出されることが多く、吸い物や一品料理として和食のコースに取り入れられるケースも見られます。また、炊き込みご飯や雑炊風にアレンジされる「いちご煮めし」といった派生メニューも存在します。



飲食業界における活用と今後の可能性

いちご煮は、郷土料理としての役割にとどまらず、高級和食・会席料理・ホテルダイニングなどにおける希少性の高い一品として導入が進んでいます。

【飲食店での活用例】

  • 割烹料理の先付・吸物代わり:コース料理の冒頭で提供することで高級感を演出。
  • ブライダル・法要料理:特別な場面にふさわしい「ごちそう」として採用。
  • 観光客向けレストラン:青森県などの郷土色を強調する地域グルメの柱に。
  • ギフト・通販商品:瓶詰・缶詰・フリーズドライ加工品として全国販売も展開。

【今後の展望】

  • 和食の国際化との融合:ミシュランレストランでの採用や、海外和食店での紹介。
  • アレンジメニューの開発:ウニ出汁ラーメン、いちご煮クリームリゾットなどの創作料理。
  • 冷凍技術の進化による流通拡大:鮮度を保ったまま全国配送可能なルートの整備。

いちご煮は、海の恵みを繊細に味わう「和食の美」を象徴する一品として、今後さらに広く評価されていくと予想されます。



まとめ

いちご煮は、青森の海と人々の暮らしから生まれた、優美で滋味深い郷土料理です。

その詩的な名前と、極上のウニとアワビが織りなす味わいは、食べる人の心に深い印象を残し、地域文化や日本の海産物の価値を世界に伝える力を持っています。

飲食業界においても、和の伝統と高級感を兼ね備えた希少価値ある一品として、今後さらなる展開と発信が期待されています。

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