飲食業界における在庫評価方法(FIFO/LIFO)とは?
飲食の分野における在庫評価方法(FIFO/LIFO)(ざいこひょうかほうほう エフアイエフオー/ライフォー、Inventory Valuation Methods (FIFO/LIFO)、Methodes d’evaluation des stocks (FIFO/LIFO))とは、食材や消耗品の在庫を帳簿上でどのタイミング・価格で評価するかを定める会計・管理の手法です。具体的には、先入先出法(FIFO:First In, First Out)と後入先出法(LIFO:Last In, First Out)という2つの方式があり、どちらを採用するかによって、原価計算、利益率、納税額、キャッシュフローへの影響が異なります。
先入先出法(FIFO)は、最初に仕入れた食材を最初に消費、販売したものとみなす方式で、在庫に残るのは最新の仕入価格です。英語圏ではFIFO (First In, First Out) と呼ばれ、仏語ではPremiere entree, premiere sortieと表記されます。これにより、インフレ下では売上原価が低く計上され、利益が高く見える一方、税負担が増加する傾向があります。
一方、後入先出法(LIFO)は、最後に仕入れた食材を最初に消費、販売したものとみなす方式で、在庫に残るのは古い仕入価格です。英語圏ではLIFO (Last In, First Out) と呼ばれ、仏語ではDerniere entree, premiere sortieと表記されます。インフレ下では売上原価が高く計上され、利益が抑えられるため、税負担が軽減される利点があります。
飲食業界では食材ロスの観点や、季節・イベントによる食材価格変動が大きいため、どちらの評価方法を採用するかが経営戦略に直結します。たとえば、価格高騰期にはLIFOで税負担を調整しつつ原価を抑え、低価格期にFIFOで利益を確保するといった使い分けが行われます。
在庫評価方法の歴史と会計基準
在庫評価方法の起源は、19世紀の工業会計にまで遡ります。製造業で原材料の入庫・出庫を厳密に管理する必要から考案され、20世紀に入ると小売業や外食産業にも広まりました。日本では戦後の会計基準設定時にFIFOが標準的とされましたが、インフレ期にはLIFOのメリットも認められ、業種や経営状況に応じた選択が可能とされてきました。
国際会計基準(IFRS)では原則としてFIFOを推奨し、LIFOは許容されない場合があります。一方、米国会計基準(US GAAP)ではLIFOを認めており、飲食チェーンの米国子会社などでは戦略的にLIFOを採用するケースもあります。
FIFOとLIFOの特徴と飲食への適用
先入先出法(FIFO)の特徴は、実際の食材ロス管理に近い点です。古い食材から消費していく運用を促すため、品質管理と廃棄ロス削減に貢献します。インフレ時には売上原価が低く計上されるため、利益率が高く見える反面、納税額も増加します。
後入先出法(LIFO)の特徴は、最新仕入価格を即座に原価に反映できる点です。インフレ期には売上原価が高く計上され、課税所得を抑制できますが、古い食材が在庫として残り、品質管理上のリスクや廃棄ロス増加につながる恐れがあります。
飲食業界では、季節限定食材や高付加価値商材が多く、価格変動が激しいため、LIFOによるコスト調整メリットが大きい場合があります。一方、日持ちの短い鮮魚や野菜などはFIFO運用を徹底し、在庫の鮮度管理を強化する運用を行います。
導入上の留意点と実務運用
在庫評価方法を導入・変更する際には、以下の点に注意が必要です。
会計基準適合性:IFRSやUS GAAP、日本基準など、適用される会計基準を確認
システム対応:POS/在庫管理システムがFIFO・LIFOを選択・切替可能か
税務影響:法人税等の納税額がどの程度変化するかシミュレーション
運用ルール策定:実際の出庫/消費フローと評価方法を整合させる作業手順の明確化
従業員教育:キッチン・倉庫スタッフへの新運用ルールの周知徹底
また、食材の品質管理や廃棄ロス削減と財務会計を両立させるために、FIFO運用による鮮度管理と、LIFO会計によるコスト管理を併用するハイブリッド運用を検討する店舗も増えています。
まとめ
飲食業界における在庫評価方法(FIFO/LIFO)とは、先入先出法と後入先出法という二つの評価方式を用いて、食材原価を会計帳簿上でどのタイミング・価格で計上するかを決める手法です。FIFOは鮮度重視の運用と利益率向上、LIFOはインフレ下の課税所得抑制に有効です。適切な会計基準確認とシステム対応、運用ルール策定・従業員教育を通じて、自社の経営戦略に最適な方法を選択し、廃棄ロス削減とキャッシュフロー改善を両立させることが重要です。
