飲食業界における削り節とは?

飲食の分野における削り節(けずりぶし、Kezuribushi、Flocons de bonite sechee)とは、主に鰹(かつお)や宗田鰹(そうだがつお)などの魚を燻して乾燥させ、木製のかんなや機械で薄く削り出した乾物のことを指します。日本料理では出汁(だし)の基礎素材として最も一般的に使用され、独特の旨味成分であるイノシン酸を豊富に含むため、味噌汁や煮物、麺つゆ、鍋料理など幅広い料理で風味付けに活用されます。削り節は、製造工程や使用する魚種、燻煙の方法によって風味や色、香りが異なり、家庭用の家庭削りから業務用の厚削り・薄削り・荒削りまで多様なラインナップが存在します。また、近年では出汁パックや顆粒だし、真空パックなど利便性を高めた商品形態も普及し、飲食店の厨房では手軽に高品質な天然だしを取り入れるための必須アイテムとなっています。



削り節の歴史と起源

削り節の起源は平安時代に伝わる「鰹節」の製法にあり、当初は魚を煮て日干しする単純な乾物でした。鎌倉時代以降、燻煙を組み合わせた燻製技術が確立されることで、耐久性が飛躍的に向上し、長期保存と遠隔地への輸送が可能となりました。室町時代には武家や寺院を中心に高級保存食として重宝され、江戸時代には庶民の間にも普及。木製かんなで薄く削る技術が発達し、「一番削り」「二番削り」など、削りの厚さや削る部位によって用途を分ける手法が確立しました。

戦後には機械削りが導入され、生産効率が向上。さらに、1960年代以降の真空パック技術や顆粒化技術の発達により、家庭や業務用の多様な商品が登場しました。



製造工程と種類

削り節の製造工程は、まず魚を蒸して骨や皮を除去し、塩を振って乾燥させる「下処理」、次に燻煙を加える「燻製」、そして天日や機械での「乾燥」、最後に「削り」の順で行われます。荒削りは厚めに削るため出汁が濃く出る一方、薄削りは短時間で澄んだだしを引くのに適しています。業務用では「厚削り節」「薄削り節」「枯節」「花かつお」などがあり、それぞれに最適な用途があります。近年は、削り節を粉末状に加工した「粉末だし」や、使いやすいティーバッグ型の「だしパック」も普及し、厨房作業を効率化しています。

また、燻煙に使用する木材や乾燥温度、工程時間によって香りや色合いが変わるため、産地ブランドや製法を売りにした高級品も多く見られます。



飲食業界での活用と現代的展望

飲食店では、削り節を用いた「一番だし」と「二番だし」を使い分け、味噌汁や煮物、麺類などで微妙な風味調整を行います。特に高級和食店では、職人がその場でかんなを使って削り、鮮烈な香りと旨味を演出することもあります。一方、居酒屋やラーメン店などでは、大量注文に対応するために業務用の厚削りや顆粒だしを多用し、安定した品質を保ちつつオペレーションを効率化しています。

近年は、ビーガンやアレルギー対応メニューの需要増加に伴い、鰹以外の魚種や植物性素材を組み合わせた代替削り節の研究も進み、サステナブルなだし素材の開発が注目されています。さらに、削り節の旨味成分を活用した調味料やソースの新商品化も活発化しており、フードテック領域でも可能性が広がっています。



まとめ

削り節は、平安時代以来の製法を基に進化を続ける日本料理の要であり、飲食業界では天然素材の深い旨味を手軽に取り入れる重要なアイテムです。現代では製造・加工技術の多様化により、業態や用途に応じた様々な形態が提供され、さらなるサステナビリティや機能性向上の取り組みが進んでいます。

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