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飲食業界における指定農場契約とは?

飲食の分野における指定農場契約(していのうじょうけいやく、Designated Farm Contract、Contrat de ferme designee)とは、飲食店や外食チェーンが特定の農場と直接契約を結び、食材の生産から納品までを一貫して管理する調達手法を指します。

この契約形態により、飲食店は食材の品質や生産過程、産地の安全性を明確に把握できるようになります。農場側は安定した販路を確保し、生産計画を立てやすくなるため、両者にとってメリットが大きいのが特徴です。

指定農場契約では、事前に栽培方法や収穫時期、出荷基準などを詳細に取り決めます。たとえば、化学肥料・農薬の使用基準、有機肥料の適用範囲、土壌改良の手法などについて、双方で合意した上で契約書に落とし込みます。

また、定期的な現地視察やサンプル検査を通じて、契約条件が守られているかを確認します。これにより、消費者に安心・安全な食体験を提供できるだけでなく、飲食店のブランド価値向上にもつながります。

近年では、SDGsやESG投資の潮流を受け、環境負荷低減や地域活性化に配慮した契約内容が重視されています。農場が地域の伝統品種を復活させたり、耕作放棄地を再生したりする取り組みを支援するケースも増えています。

飲食業界においては、消費者の食への関心が高まり、トレーサビリティ(生産履歴の追跡可能性)が求められるようになりました。指定農場契約は、その要請に応える有効な手段として、今後ますます普及が進むと考えられます。



指定農場契約の歴史と背景

戦後の食料不足期には、飲食店が市場を通じて食材を確保することが一般的でした。しかし、1960年代以降の高度経済成長と流通インフラの整備により、大規模流通ネットワークが拡大。飲食店はより安価で均質な食材を入手できるようになりました。

ところが、食品事故や品質“偽装”問題が相次いだ2000年代以降、消費者の安全志向が高まり、産地や生産過程の透明化が求められるようになりました。その流れの中で登場したのが、特定農場と直接契約を結ぶ“指定農場契約”です。

当初は高級レストランやホテルが中心でしたが、近年ではチェーン居酒屋やカフェ、弁当業者など幅広い業態に広がっています。背景には、ITによる生産・流通履歴の可視化技術の進化や、SDGs対応への企業姿勢の強化があります。



契約の仕組みと運用ポイント

指定農場契約の主な流れは次の通りです。まず、飲食店側が求める品質要件・生産方法を明確化し、複数農場にヒアリングを実施します。その後、候補農場を選定し、サンプル試験や現地視察を経て最終業者を決定します。

契約書には、栽培方法、有機認証要件、収穫搬送方法、代金支払い条件、品質クレーム対応などを盛り込みます。品質クレーム発生時の連絡フローや返品条件をあらかじめ定めることで、トラブル時の対応がスムーズになります。

運用では、定期的な生育状況報告や、スマートフォンを活用した現地写真の共有、IoTセンサーによる温度・湿度管理データの同期など、ITツールの活用が鍵となります。これにより、遠隔地の農場とリアルタイムに情報交換が可能になります。



現在の使われ方と業界事例

大手外食チェーンでは、全国数十~数百の農場と契約し、野菜や果物、畜産品を供給しています。たとえば有名カフェチェーンは、コーヒー豆だけでなくサラダ用のリーフ野菜も指定農場契約で調達し、メニューごとに最適な農場を切り替える手法を取っています。

また、地方創生の観点から、都市部の飲食店が地方農家と連携し、地域活性化を図る“都市農村連携”モデルも注目されています。地域の特産物を都市部でPRし、観光誘客や6次産業化を推進する好循環が生まれています。



指定農場契約の課題と今後の展望

指定農場契約の利点は多いものの、契約農場の管理コストや物流コストの増加、契約内容の見直し負荷などの課題も存在します。また、自然災害や気候変動による収量減リスクを農場とどのように分担するかは、今後の大きな論点です。

将来的には、AIによる気象予測データと連携した柔軟な契約条件の自動調整や、ブロックチェーンを活用した生産履歴管理の高度化が進むと期待されます。これにより、契約農場のリスク分散とサプライチェーンの透明性がさらに高まるでしょう。



まとめ

指定農場契約は、生産者と飲食店を直接結ぶ調達モデルとして、安全・安心な食材の安定供給とブランド価値向上を両立させる手法です。今後はIT技術の活用とリスク分担の工夫により、さらなる普及と進化が期待されます。

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