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飲食業界におけるクラフトワインバーとは?

飲食の分野におけるクラフトワインバー(くらふとわいんばー、Craft Wine Bar、Bar a vin artisanal)は、職人のこだわりによって生み出された少量生産のクラフトワインを中心に取り扱い、地域性やストーリー性を重視したワイン体験を提供する飲食業態のことを指します。従来のワインバーが高級感やラグジュアリーな雰囲気を前面に押し出していたのに対し、クラフトワインバーはよりカジュアルかつパーソナルな空間を重視し、作り手とのつながりや生産背景にフォーカスしたサービスが特徴です。

フランス語では「bar a vin artisanal(バール・ア・ヴァン・アルティザナル)」と表記され、artisan(アルティザン)=職人の精神を体現するワインと、提供する場が一体となった意味合いを持ちます。クラフトワインそのものは、自然酵母による発酵、無濾過、亜硫酸無添加など、ナチュラルワインやバイオダイナミックワインの要素を多く含んでおり、気候や土地柄、作り手の哲学が表れる“個性重視”のスタイルが中心です。

このようなクラフトワインを扱うクラフトワインバーでは、ワインだけでなくペアリングされる料理も地産地消や発酵食品、オーガニック素材にこだわる傾向があり、“持続可能性と感性の共存”がひとつのキーワードとなっています。都市部を中心に、自然派ワインの愛好家や食に関心の高い層から支持を集めており、今後ますます注目される飲食スタイルです。



クラフトワインとその文化的背景

クラフトワインバーという概念の成り立ちは、1990年代以降にヨーロッパで広まったナチュラルワインムーブメントにその源流を持ちます。フランスのロワール地方やイタリアのピエモンテ、スペインのカタルーニャ地方などで、自然栽培されたブドウを使い、酸化防止剤を最小限に抑えた手作りワインが登場しました。

このようなワインは、既存のワイン評価軸(果実味、タンニン、余韻など)では語れない“生命力”や“発酵の生きた味”をもっており、消費者と生産者がより近い関係であることが重要視されてきました。

こうした文脈の中で、クラフトビールやクラフトコーヒーと同様に、ワインの世界にも「作り手を感じる、ストーリーを飲む」という消費スタイルが生まれ、その受け皿となる場としてクラフトワインバーが都市部を中心に誕生していきました。

日本では2010年代に入り、東京・京都・福岡・札幌などでこの流れが加速。輸入自然派ワインの専門店がバーを併設する形で展開されたり、農家直送の国産クラフトワインを扱うレストランが登場したりと、国内外の多様な作り手を紹介する場として定着しています。



クラフトワインバーの特徴と構成要素

クラフトワインバーは単なるワイン提供の場ではなく、文化・生産・食の体験を包括する場として構築されています。以下に主な構成要素を整理します。

  • 自然派・少量生産ワインの取扱い:ナチュラル、ビオワイン、オレンジワインなど、個性豊かなラインナップ。
  • 作り手との関係性:輸入代理店や自社輸入を通じて、作り手の顔や哲学を伝えるストーリーテリング重視。
  • 料理とのペアリング:発酵食品、無添加食材、ローカル野菜を活かしたペアリングメニュー。
  • 空間設計:ナチュラルウッド、アンティーク家具、自然光を取り入れた温かみのある空間づくり。
  • 提供スタイル:グラスワインの入れ替え制やフリーポア形式など、自由度の高い飲み方を提供。

また、クラフトワインバーでは「人と人をつなぐ場所」としての機能も重視されており、ワイン会や作り手を招いたトークイベント、地方ワインの試飲会なども頻繁に行われています。こうした運営形態により、単なる飲食の場を超えた“体験と学びの場”としての価値が高まっています。

さらに、サブスクリプション形式の試飲パスやQRコードでのワイン情報提供など、ITとの親和性も高く、クラフト性×テクノロジーの融合も進んでいます。



飲食業界におけるクラフトワインバーの意義と展望

クラフトワインバーは、飲食業界における新しい価値提供の形として注目されています。特に次のような側面から、その重要性が高まっています。

  • 差別化要素としての“ストーリー”:ワイン一本ごとに背景を語れることがブランディングにつながる。
  • 地域資源の活用:地方ワイナリーとの連携で“ローカルから世界へ”を体現する場に。
  • 教育的価値:初心者にもわかりやすく、自然派ワイン文化の啓蒙・体験の場として機能。
  • 環境配慮型店舗の実現:廃棄物削減、リユースボトルの使用、再生可能エネルギーでの運営など。

また、従来の「格式」「ソムリエ依存」といった敷居の高いワイン文化から脱却し、日常の食卓に寄り添う新たなワイン体験を創出している点も特筆されます。テイクアウトワインや瓶詰めサービスの導入など、パンデミック以降の新常態にも柔軟に対応しています。

今後は、アジア諸国におけるクラフトワインムーブメントの拡大とともに、グローバルな“マイクロワイナリーと消費者をつなぐ拠点”として、クラフトワインバーの需要はさらに拡大していくと予測されます。



まとめ

クラフトワインバーは、ワインを“飲む”から“感じる・語る・つながる”体験へと昇華させる空間です。

その存在は飲食業界において、単なる商品提供の枠を超えた文化発信・地域連携・サステナビリティの象徴として機能しています。これからの時代に求められる“人間味のある食体験”の中心として、クラフトワインバーの価値はますます高まることでしょう。

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