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ホテル業界におけるAM(Accommodation Manager)とは?

ホテル業界の分野におけるAM(Accommodation Manager)(えーえむ、Accommodation Manager、Directeur de l’hebergement)とは、宿泊部門全体の運営管理を統括する役職を指します。予約受付や客室割り当て、勤怠管理、清掃・メンテナンスの調整、顧客満足度向上に向けた施策立案など、多岐にわたる業務を担当し、滞在中のゲストが安心して快適に過ごせる環境を整える重要なポジションです。



AMの歴史と役割の変遷

AM(Accommodation Manager)の役職は、ホテル業界が発展する中で宿泊部門の業務が複雑化したことを背景に誕生しました。19世紀後半から20世紀初頭にかけてヨーロッパやアメリカで近代ホテルが形成されると、総支配人(GM)が現場のすべてを統括するには限界が生じました。そこで、宿泊部門専任のマネージャーとして導入されたのがAccommodation Managerの原型です。

日本においても高度経済成長期以降、ホテル数の増加と多様化に伴い、現場運営を専門的に担うポジションとしてAMが導入されました。当初は予約業務やフロント業務の統括を主に担っていましたが、2000年代以降は顧客ニーズの多様化やIT技術の進化により、役割が拡大。従来の客室管理に加えて、収益最大化のためのダイナミックプライシング検討や、オンライン旅行代理店(OTA)との契約交渉を行うケースも増加しました。

現在では多くのホテルがAMを配置し、GMを補佐する役割を担うとともに、宿泊部門の中核として組織を牽引しています。特に外資系ホテルや大手チェーンでは、複数のプロパティを跨いで業務を行うRegional AMが配置され、グローバルな運営基準の共有や各ホテル間の連携強化が図られています。



AMの具体的な業務と求められるスキル

AMの業務は多岐にわたります。まずは予約管理です。電話やメール、OTAを通じて入る宿泊予約を正確に管理し、客室在庫の最適化を図ります。また、ピーク期や繁忙期に備えた収益予測を行い、販売戦略を策定することも重要な業務です。収益部門と連携し、料金設定やプロモーション企画を立案し、ホテル稼働率の向上を目指します。

次に、客室運営の統括があります。客室清掃スケジュールや点検業務を管理し、クオリティを維持します。清掃スタッフやメンテナンス担当者と連携し、故障やクレームに迅速対応するためのフローを構築します。客室の備品管理やアメニティ発注もAMの役割であり、コスト管理と顧客満足度の両立が求められます。

さらに、フロントスタッフの教育・指導も重要な業務です。接客マナーやクレーム対応の研修を実施し、サービス品質の標準化を図ります。多言語対応が必要な場合には語学研修や外国人スタッフとの連携をサポートし、インバウンドゲストへの対応力向上を推進します。また、客層の変化に応じたサービス提供の工夫も行い、ゲストエクスペリエンスの向上に努めます。

加えて、ITシステムの導入・運用もAMの業務領域に含まれます。PMS(Property Management System)やチャネルマネージャー、レベニューマネジメントシステムの設定・最適化を行い、現場オペレーションの効率化を図ります。データ分析を活用し、集客効果や顧客傾向を把握し、意思決定に反映させることが求められます。



AMの現在の位置づけと今後の展望

現在、多くのホテルではAMが宿泊部門の中枢として位置づけられ、将来的なGM候補として育成されるケースが増えています。組織階層の中でGMの右腕として現場運営を支え、部門間の連携を強化する役割が期待されています。また、COVID-19以降は衛生管理や非接触サービスが重視されるため、AMは感染防止対策の立案・実施をリードし、安全・安心な滞在環境を提供する責任も担います。

今後はサステナビリティへの対応が一層重要視されます。AMはエネルギー管理や廃棄物削減、地域連携プログラムの企画など環境配慮型運営を推進し、ホテルと地域社会の共生モデル構築に貢献します。地元食材を使った朝食メニューや省エネ設備の導入といった取り組みを統括し、CSR活動を実行可能な形で展開する役割も増えるでしょう。

さらに、デジタルマーケティングやAI導入などのテクノロジー活用が加速する中、AMは顧客データ分析やチャットボットなどの新しいサービス導入プロジェクトを牽引します。これにより、個別ニーズに合わせたパーソナライズドサービスの提供や効率的なオペレーションが可能となり、ホテルの競争力強化につながります。

加えて、インバウンド需要の回復に伴い多文化対応が不可欠です。AMは外国人ゲスト向けのプログラム開発や多言語ウェブサイト整備、スタッフの語学研修を企画・実施し、国際的な顧客満足度向上を目指します。これにより、ホテルのブランドイメージ向上やリピーター獲得に寄与することが期待されます。



まとめ

AM(Accommodation Manager)は、宿泊部門全体の運営管理を統括し、予約管理、客室運営、スタッフ教育、ITシステム導入など多岐にわたる業務を担う重要な役職です。歴史的には近代ホテルの発展とともに誕生し、現在ではGMの右腕としてホテル運営の中枢を支えています。

今後はサステナビリティ対応やデジタル技術活用、多文化対応が求められ、AMには幅広い知識とスキルが必要となります。AMはホテル価値を高め、顧客満足度を向上させるキーパーソンとして、今後もその重要性を増していくことでしょう。

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