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ホテル業界におけるアイドル・タイムとは?

ホテル業界の分野におけるアイドル・タイム(あいどる・たいむ、Idle Time、Temps mort)とは、客室が空室状態のまま次のチェックインまで使用されない時間帯を指します。具体的には、前泊のチェックアウト時刻(通常10時~11時)と次泊のチェックイン時刻(15時~16時)の間に発生する客室の「稼働しない時間」を意味し、客室稼働率や収益に影響を及ぼします。アイドル・タイムを最小化することは、ホテル運営の効率化や収益最大化において重要な課題です。



アイドル・タイムの定義と発展

アイドル・タイムは、もともと製造業やオフィス業務などで使われていた概念であり、機械や設備、人員が稼働せず遊休状態にある時間を指します。ホテル業界では、客室や施設、スタッフが本来の稼働機会を逃している時間として用いられ、特に客室のアイドル・タイムは「稼働率の低下」や「機会損失」として問題視されてきました。

過去、ホテルはチェックアウト・チェックインの時間を固定し、清掃業務や施設点検を行う時間としてアイドル・タイムが発生することを前提としてきました。しかし、1990年代以降のインターネット普及とオンライン予約システムの普及により、ゲストのニーズが多様化し、客室供給のタイミングを柔軟に調整できるようになりました。これに伴い、アイドル・タイムをいかに短縮するかが収益管理上のテーマとなり、「ダイナミック清掃」や「早期チェックイン/遅めのチェックアウト」プランなど、さまざまな対策が開発されるに至りました。

また、ホテルチェーンや大規模リゾートでは、客室稼働のリアルタイムデータを分析するBIツールが導入され、アイドル・タイムの発生傾向を可視化し、清掃スケジュールの最適化や料金戦略に反映させる動きが加速しています。現代のホテル運営では、アイドル・タイムを制御可能な指標とし、収益管理(Revenue Management)の一環として重要視されています。



アイドル・タイムの種類と影響

ホテル業界におけるアイドル・タイムは大きく二つの側面から捉えられます。まず、客室稼働アイドルです。前泊のチェックアウト(通常10時~11時)から次泊のチェックイン(15時~16時)までの間、客室が使用されていない時間を指し、この間は客室を販売できないため、潜在的な収益機会を逃します。特に繁忙期ではアイドル・タイムをいかに短縮するかが鍵となり、清掃スタッフの配置や動線設計が重要です。

次に、スタッフ稼働アイドルがあります。客室清掃、レストランや宴会サービス、フロント業務など各部門で、ピークタイムと閑散タイムの間に人員が過剰となり、稼働が低下する時間帯です。例えば、朝食ビュッフェの終了後からランチ営業開始前の時間帯や、チェックインピーク(15時~18時)が一段落した深夜帯などにスタッフのアイドル・タイムが発生しやすく、その間の人件費コストを増加させる要因となります。

アイドル・タイムが長期化すると、ホテル全体の運営効率が低下し、収益性を下げる要因となります。客室アイドルが多い場合は、平均客室単価(ADR)を上げても稼働率が低いため収益最大化が難しくなります。スタッフアイドルが多いと、労働コストが無駄に増加し、スタッフのモチベーションにも悪影響を与えかねません。



アイドル・タイム削減の対策と活用例

アイドル・タイム削減の代表的な手法に、早めのチェックイン・遅めのチェックアウトプランがあります。例えば、通常15時チェックインのところ12時から入室可能とし、料金を割引することで午前中の客室を有効活用する施策です。これにより、ピーク前の客室稼働を促進し、清掃時間を分散させることができます。同様に、午後ゆったりチェックアウトを14時や15時に延長することで、客室が午後まで稼働し、稼働率を向上させます。

また、デイユースプランもアイドル・タイム対策として有効です。午前中から夕方までの半日利用プランを設定し、出張利用者やコワーキングスペースとして客室を短時間提供することで、長時間の空室期間を埋め、収益を増加させます。特にビジネスホテルや都市型ホテルでは需要が高く、アイドル・タイムを有効な収益機会に変える手法として人気です。

さらに、清掃スケジュールの最適化も重要です。アイドル・タイム発生予測ツールを導入し、清掃スタッフの動線と休憩時間を調整することで、チェックアウト後すぐに清掃を開始し、次のチェックインに備えます。これにより、客室が短時間で稼働可能状態となり、アイドルタイムを最小化できます。多くのホテルでは、PMS(Property Management System)や清掃管理システムと連携し、清掃進捗をリアルタイムで把握しながら部屋割りを自動で再配分する仕組みを導入しています。

また、繁忙期にはオーバーブッキング戦略を活用して、キャンセルやノーショーを考慮した上で客室数を超えた販売を行い、実稼働アイドルを抑制します。リスク管理として、直前キャンセル向けキャンセルポリシーを設定し、キャンセル料を確保しつつ、客室稼働率を最大化します。



まとめ

アイドル・タイムとは、ホテルにおける客室やスタッフが稼働せず、遊休状態となる時間を指し、主に「客室稼働アイドル」と「スタッフ稼働アイドル」に分けられます。歴史的には製造業由来の概念がホテル業界に応用され、客室稼働率向上や収益最大化を目指すうえで重要な指標となりました。

アイドル・タイム削減のためには、早めのチェックイン・遅めのチェックアウト、デイユースプラン、清掃スケジュール最適化、オーバーブッキング戦略など多様な手法が採用されます。近年ではPMSやBIツールを活用したリアルタイム分析が進み、より効率的な運営管理が可能となっています。アイドル・タイムの可視化と最適化は、今後もホテル運営の競争力を左右する重要な要素であり、各ホテルが自社の特性に合わせた施策を導入し続けることが求められます。

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