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ホテル業界におけるアクチャル・セールス・ルーム・レートとは?

ホテル業界の分野におけるアクチャル・セールス・ルーム・レート(あくちゃる・せーるす・るーむ・れーと、Actual Sales Room Rate、Tarif reel de vente)とは、ホテルが実際に販売した客室の平均客室単価を示す指標です。通常は販売開始時に設定したレギュラー料金(Rack Rate)やプラン料金から割引やプロモーションを適用した後の、実際に顧客が支払った金額を基に算出されます。収益管理(Yield Management)や収益最適化の場面で用いられ、ホテルの稼働状況や顧客需要に合わせた価格戦略の効果測定に不可欠な要素です。



アクチャル・セールス・ルーム・レートの定義と役割

アクチャル・セールス・ルーム・レートは、実際に販売された客室料金の平均値を指す用語であり、ADR(Average Daily Rate)とも呼ばれます。ホテルが設定するレギュラー料金(Rack Rate)は理想的な客室単価を示す一方、アクチャル・セールス・ルーム・レートは割引やアップグレード、パッケージプラン適用後の実質的収益を反映します。つまり、実際に顧客が支払った金額をベースに算出することで、ホテルの収益パフォーマンスをより正確に把握できます。

収益管理においては、販売チャネルや季節需要、イベント開催などで変動する需要と供給を踏まえて価格戦略を立案し、実績をアクチャル・セールス・ルーム・レートで検証します。これにより、最適な料金設定が行えているか、割引が利益を損なっていないかを評価し、次期の価格改定やプロモーション企画に反映させることが可能となります。

さらに、この指標は株主や投資家向けの業績報告、業界比較レポート、ホテルチェーン内の各施設比較などにも活用され、ホテル運営の健全性や競争力を示す重要なKPI(重要業績評価指標)となっています。アクチャル・セールス・ルーム・レートを高めることは、単に客室単価を上げるだけでなく、ホテル全体の収益性向上につながるため、ホテル経営において中核的な役割を果たします。



客室単価との違いと算出方法

アクチャル・セールス・ルーム・レートと混同されやすい用語に、「レギュラー・ルーム・レート(Rack Rate)」と「平均客室単価(ADR)」があります。レギュラー・ルーム・レートはあくまで定価を指し、繁忙期や閑散期問わず一律に提示される理想的な料金です。一方でアクチャル・セールス・ルーム・レートは、実際に販売された全ての客室料金を販売室数で割り、販売実績を反映します。

算出式は以下のとおりです。

アクチャル・セールス・ルーム・レート = 客室売上総額 ÷ 販売客室数

ここで「客室売上総額」は、割引やパッケージ適用後の実際売上を集計し、「販売客室数」は実際に販売された客室数を指します。たとえば、ある日100室販売し、売上が100万円であれば、アクチャル・セールス・ルーム・レートは1万円となります。

さらに精度を高めるために、チャネル別やプラン別のアクチャル・セールス・ルーム・レートを分析する手法もあります。オンライン旅行代理店(OTA)経由や直販サイト、法人契約、グループ予約など各チャネル別に収益を分解し、最も収益性の高いチャネルやプランを特定し、戦略的に資源配分を行うことができます。これにより、収益最適化が加速しやすくなります。



歴史的背景と活用の進化

アクチャル・セールス・ルーム・レートという概念は、1970年代の米国で登場した収益管理(Yield Management)の発展に伴い生まれました。当時は航空業界で座席クラス別価格を最適化する手法が導入されており、その成功がホテル業界にも波及しました。1980年代以降、ホテル業界でも需要予測と価格弾力性に基づくダイナミック・プライシング(動的料金設定)が行われるようになり、実際に販売されたレートを正確に把握する必要が生まれたのです。

日本国内ではバブル期のホテル建設ブームを経て1990年代には大手チェーンホテルがPMS(Property Management System)を導入し始め、アクチャル・セールス・ルーム・レートのデータ蓄積が可能になりました。その後、インターネット予約やメタサーチ、OTAの普及により、チャネル別の売上データがリアルタイムで収集できるようになり、2000年代から現在にかけてアクチャル・セールス・ルーム・レートはホテル経営の基礎指標として定着しました。

さらに近年はAIや機械学習を活用した収益管理システム(Revenue Management System)が登場し、将来の需要予測と最適料金を自動算出する時代となりました。これにより、アクチャル・セールス・ルーム・レートの精度が向上し、従来の月次レポートではなく、日々あるいは時間単位で収益状況を把握できるようになっています。また、ホテル同士の競合比較や業界トレンドを把握するためのベンチマークレポートにも活用され、戦略的意思決定を支える役割が拡大しました。



まとめ

アクチャル・セールス・ルーム・レートは、ホテルが実際に販売した客室の平均客室単価を示す指標であり、割引やプロモーション適用後の実績を反映する点が特徴です。収益管理(Yield Management)の概念が普及した1970年代以降、実際の売上を基にホテル経営を最適化するための必須指標として発展し、現在ではPMSやAI搭載の収益管理システムによってリアルタイムに把握できるようになっています。

チャネル別やプラン別のアクチャル・セールス・ルーム・レートを分析することで、最適な資源配分や価格戦略を立案でき、ホテルの収益性向上に貢献します。アクチャル・セールス・ルーム・レートは、ホテルの稼働状況と価格戦略の成果を可視化し、競争力を高めるための重要なKPIであり、今後も進化し続けることでしょう。

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