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ホテル業界におけるアジアンテイスト客室とは?

ホテル業界の分野におけるアジアンテイスト客室(あじあんていすときゃくしつ、Asian‐Taste Room、Chambre a l′inspiration asiatique)とは、アジア各国の伝統的な意匠や文化的エッセンスを取り入れ、和やかで温かみのある空間演出を施した客室を指します。木や竹などの自然素材、格子や屏風といった和風要素、東南アジアのランタンやバティック柄、さらには寝具や装飾品における鮮やかな色彩などが調和し、アジアの魅力を滞在体験として楽しめる空間を提供します。観光客やビジネス客が日本国内ながら異国情緒を味わえる点が魅力であり、旅の思い出を彩る宿泊プランとして人気があります。



アジアンテイスト客室の歴史と由来

「アジアンテイスト客室」という概念は、1980年代後半から1990年代にかけて日本のホテル業界で生まれました。当時、海外からの観光客が増加し、多様な宿泊体験を求める声が高まったことが背景にあります。和室や洋室に加えて、アジア各国の文化を取り入れた部屋を提供することで、差別化を図りつつ、インバウンド需要にも応えようとしたのが始まりでした。

語源としては、英語の“Asian Taste”を直訳したものです。旅行雑誌や海外のインテリアデザイン誌に掲載されていたアジアンリゾートの写真や記事が、日本のホテル運営者やデザイナーの目に留まり、そのままコンセプト化されたと言われています。仏語では「Chambre a l′inspiration asiatique」と表記し、フランス人観光客にもアジアン風客室を訴求しました。



アジアンテイスト客室のデザイン要素と特徴

アジアンテイスト客室では、自然素材を多く用いることが基本です。床や家具には竹、ラタン、チーク材などの素材を採用し、温かみのある色調を演出します。壁面には麻や綿のファブリックを用い、落ち着いた雰囲気を醸し出します。

また、アジア特有の装飾品が随所に配されています。例えば、インドネシアのバティック柄のクッションやカーテン、タイのシルク製ベッドカバー、ベトナムの蓮をモチーフにしたアートパネル、さらには金色や朱色など華やかな色彩をアクセントとして取り入れることで、空間に深みと奥行きを加えています。

インテリアだけでなく、照明にも工夫が見られます。東南アジア風のランタン風シェードや、間接照明を用いた柔らかな光の演出により、滞在者にリラックス感を提供します。さらに、アロマディフューザーや香炉を併設し、インドやタイ由来の香りを楽しめる場合もあります。



現在の使われ方と顧客ニーズ

近年では、国内外問わず多くのホテルがアジアンテイスト客室を導入しています。都市型ホテルではビジネス客向けに「安らぎと疲労回復」をテーマに据え、仕事帰りのリフレッシュ空間として提案。リゾートホテルでは、旅行者が非日常を味わえるよう、プールサイドや庭園に近接した部屋にこのスタイルを配置し、滞在全体をリゾート気分で包み込む演出がなされています。

顧客ニーズとしては、まず「日本にいながらアジアを感じたい」という要望が挙げられます。アジア圏の旅行を計画中の下見や、コストを抑えつつアジアンリゾート気分を楽しみたいという声もあります。また、SNS映えするインテリアは若い層にも人気で、友人同士やカップルが写真撮影を目的に利用するケースも増えています。

さらに、最近のトレンドとして、サステナブル素材を活用したアジアンテイスト客室が注目されています。使い捨てプラスチックの削減や、環境に優しい染色技術を採用したリネン類など、環境配慮型の要素を取り入れたデザインが増加傾向にあります。



まとめ

アジアンテイスト客室とは、アジア各国の自然素材や伝統的な意匠を取り入れたデザインで、温かみのある非日常空間を提供する客室タイプです。1980年代後半以降、インバウンド需要や差別化を図る目的で日本のホテル業界に広まり、今日では都市型・リゾート型を問わず多くの施設で採用されています。

特徴としては竹やラタンなどの自然素材、バティック柄やシルク製品、ランタン風照明などが挙げられ、香りや間接照明によるリラックス演出も魅力です。最近では環境に配慮したサステナブル素材の活用が増え、若い世代やエコ意識の高い旅行者からの支持を集めています。アジアンテイスト客室は、日本にいながらアジアの魅力を味わえる滞在プランとして、今後も多くのホテルで注目され続けるでしょう。

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