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販促・マーケティングにおけるダイナミックプライシングとは?

販促・マーケティングにおけるダイナミックプライシング(だいなみっくぷらいしんぐ、Dynamic Pricing / Tarification Dynamique)とは、市場の需要と供給、競合状況、在庫、時間帯などの要素に基づき、商品やサービスの価格をリアルタイムで変動させる価格戦略のことを指します。主に航空券やホテル料金、eコマース、イベントチケット販売などで活用されており、最適なタイミングで価格を調整することで売上最大化や在庫最適化を実現します。


ダイナミックプライシングの歴史と背景

ダイナミックプライシングの起源は、1970年代の航空業界にあります。航空会社は、座席数が限られた中で効率的に利益を確保するため、需要の高い時間帯や季節に価格を引き上げ、需要が低い時期には割引価格を提供する戦略を取り入れました。この仕組みは「イールドマネジメント(収益管理)」と呼ばれ、航空業界の収益最大化に大きく貢献しました。

その後、1990年代にはホテル業界でもダイナミックプライシングが導入され、予約のタイミングや部屋の稼働状況に応じて料金が変動するようになりました。2000年代以降、インターネットとデータ分析技術の発展により、ECサイトやオンラインチケット販売でも価格調整がリアルタイムで行われるようになり、より幅広い業界で活用されるようになりました。

ダイナミックプライシングの仕組み

ダイナミックプライシングは、以下の要素を考慮して価格が自動的に変動する仕組みです:

  • 需要と供給の変動:需要が高まると価格を引き上げ、需要が低下すると割引価格を設定します。
  • 競合状況の分析:競合他社の価格をモニタリングし、市場内での競争力を維持するために価格を調整します。
  • 在庫状況:在庫が少なくなると価格を上げ、在庫が多い場合には価格を下げて売り切る戦略を取ります。
  • 時間帯や季節:ピークタイムや繁忙期には高価格、オフピーク時には低価格で提供します。
  • 顧客の購買履歴や行動データ:個々の顧客の過去の購買履歴や行動パターンを基に、個別に価格を設定することもあります。

これらのデータはAIやアルゴリズムによってリアルタイムで分析・処理され、企業側は柔軟に価格戦略を実施することが可能になります。

ダイナミックプライシングの活用例

ダイナミックプライシングは、多様な業界で活用されています。以下にその主な事例を紹介します:

  • 航空業界:航空会社は需要が高い休日やピークシーズンに料金を高く設定し、平日や早朝便などのオフピーク時には割引価格を提供します。
  • ホテル業界:宿泊予約の需要が高まる週末や大型連休には宿泊費を上げ、閑散期には低価格で提供し稼働率を高めます。
  • ECサイト:オンラインショッピングでは、在庫状況や競合他社の価格をもとに商品価格をリアルタイムで調整します。
  • イベント・チケット業界:コンサートやスポーツイベントでは、人気の高い席や日時のチケット価格を高く設定し、残席が少なくなるとさらに価格が上昇します。
  • 小売業界:スーパーやコンビニでは、賞味期限が近い商品に割引を適用し、廃棄ロスを削減する施策が行われています。

例えば、大手ECサイトでは、ユーザーが商品を閲覧した履歴や購入傾向を分析し、その時点で最適な価格を提示することで、コンバージョン率を向上させています。

ダイナミックプライシングのメリットと課題

ダイナミックプライシングの主なメリットには以下の点があります:

  • 売上の最大化:需要が高いタイミングで価格を引き上げることで、利益を最大化できる。
  • 在庫管理の最適化:在庫過多や余剰を避け、効率的に販売を促進できる。
  • 競争力の維持:競合他社の価格動向に迅速に対応し、顧客の流出を防ぐ。

一方で、以下の課題も存在します:

  • 顧客の不信感:価格が頻繁に変動することで、顧客が不公平感や不信感を抱く可能性がある。
  • 価格競争の激化:競合との過度な価格競争に陥り、利益率が低下するリスクがある。
  • 技術導入のコスト:AIやアルゴリズムのシステム導入には初期費用や運用コストがかかる。

ダイナミックプライシングの未来

今後、ダイナミックプライシングはAIやビッグデータ技術のさらなる進化により、より高度で精緻な価格設定が可能になると予想されます。特に顧客一人ひとりの購買履歴や行動データを基にした「パーソナライズドプライシング」が広がり、最適なタイミングと価格で商品やサービスを提供する手法が一般化するでしょう。

さらに、サステナビリティへの関心が高まる中で、需要予測による過剰生産の防止や在庫の効率的な管理が求められ、ダイナミックプライシングがその解決策として注目されています。将来的には、環境負荷軽減や持続可能な消費を実現するための重要なツールとして進化していくことが期待されます。


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