印刷業界におけるアラビアゴム液とは?
アラビアゴム液(ふりがな:あらびあごむえき、英語表記:Gum Arabic Solution、仏語表記:Gomme Arabique)は、主にアカシアの樹液から抽出される天然樹脂を水に溶かした液体です。印刷業界では、特にオフセット印刷で重要な役割を果たしており、プレートの非画像部分の保護や湿潤性の維持に利用されます。
アラビアゴム液の歴史と由来
アラビアゴムは古代エジプト時代から使用されており、当初は絵画や書物の製作に使われていました。その後、中世ヨーロッパでは絵の具の結着剤として広まり、近代に入ると印刷技術の進歩に伴い印刷業界でも使われるようになりました。「アラビアゴム」という名称は、アラビア半島を経由してヨーロッパに輸出された歴史的背景に由来します。
印刷における利用の始まり
オフセット印刷が発明された20世紀初頭、アラビアゴム液はプレート上の非画像部分を水分で保護するために採用されました。水分が蒸発してもゴム層が残り、非画像部分が油性インクをはじく役割を果たします。この特性により、印刷の品質と効率が大幅に向上しました。
アラビアゴム液の成分と性質
アラビアゴム液の主成分は多糖類とグリコタンパク質で、これにより高い粘着性と安定性が得られます。無色透明で水に容易に溶けるため、調整が簡単であり、他の化学物質との相性も良好です。また、天然由来のため、環境負荷が低いことも特徴の一つです。
印刷工程での具体的な役割
オフセット印刷では、アラビアゴム液は主に以下の用途で使用されます:
- プレートの非画像部分の保護:インクが付着しないようにする。
- 湿潤液としての利用:水分の蒸発を防ぎ、適切な湿潤性を維持する。
- 印刷中断時の保護:作業を停止してもプレート表面を傷つけない。
現在の使われ方と課題
現在でもアラビアゴム液はオフセット印刷において不可欠な素材として使用されています。ただし、天然資源に依存するため供給の安定性が課題となっています。これに対応するため、合成代替品の開発も進められていますが、アラビアゴム液の柔軟性や環境適応性を完全に再現することは難しいとされています。
環境への影響と持続可能性
アラビアゴム液は自然由来の製品であり、環境負荷が低い点が評価されています。さらに、持続可能な方法での採取が進められており、樹木の保護や植林活動を支援する動きも広がっています。
まとめ
アラビアゴム液は、印刷業界で長年にわたり信頼されている素材です。その歴史的な背景、科学的な特性、そして印刷工程での具体的な役割は、オフセット印刷の品質と効率を支える基盤となっています。今後は持続可能性の観点からも注目されることでしょう。