プレステンションとは？
印刷業界における「プレステンション」（ふりがな：ぷれすてんしょん、英：Press Tension、仏：Tension de Presse）とは、印刷機において、紙やフィルムを搬送する際に適用される張力のことです。適切なプレステンションを維持することで、印刷工程で紙やフィルムの歪みやずれを防ぎ、印刷品質を高めることが可能です。特に高速での大量印刷や薄いフィルムの印刷において重要であり、印刷物の精度と安定性に直接影響を与える要素です。
プレステンションの概要
プレステンションとは、印刷機のロールや搬送装置が印刷用紙やフィルムに加える張力であり、搬送中の紙やフィルムの位置や形状を安定させる役割を担っています。紙が張りすぎると破れやすくなり、逆に緩みがあると搬送の際にずれが生じ、印刷のずれやかすれが発生することがあります。適切なプレステンションは、印刷物の色ずれや版の重なり精度を高め、仕上がりを安定させるために不可欠です。
特に、大量に高速で印刷するオフセット印刷や、薄いフィルム素材を用いるグラビア印刷では、プレステンションの調整が重要です。張力を保ちながらも印刷素材が破れたり変形したりしないようにすることで、効率的かつ高品質な印刷が可能になります。
プレステンションの技術的特徴と仕組み
プレステンションの調整は、印刷機に設置されたテンションコントロール装置によって行われます。テンションコントロール装置は、搬送中の紙やフィルムの張力をセンサーで検知し、張力をリアルタイムで調整します。多くの印刷機には、張力を微細に制御できる機能が備わっており、紙やフィルムの種類、厚さ、印刷速度に応じて最適なテンションが自動的に適用されます。
また、プレステンションにはいくつかの調整ポイントがあり、印刷開始前に予め設定する「初期テンション」や、印刷工程中に逐次調整される「動的テンション」があります。これにより、印刷機が稼働中でも常に適切なテンションが維持されるため、紙やフィルムのずれやたるみが防止され、安定した搬送が確保されます。
プレステンションの歴史と発展
プレステンションの概念は、印刷機が自動化される以前の活版印刷や手動での印刷においても、紙の位置や張力の調整が重要だったことに由来します。特に、オフセット印刷が広まった20世紀前半には、搬送中の紙の張力を適切に保つことが印刷精度に直結することが明らかになり、プレステンションの制御が求められるようになりました。
1970年代以降、印刷機にテンションコントロールシステムが導入されるようになり、電子制御によって紙やフィルムの張力を正確に調整できるようになりました。近年では、デジタルセンサーやAI技術の発展により、リアルタイムでのテンション調整が可能となり、印刷の精度が一層向上しています。
現在のプレステンションの重要性と用途
現在、プレステンションは商業印刷やパッケージ印刷において不可欠な工程であり、特に高精度が求められる場面でその重要性が増しています。例えば、雑誌やカタログ、広告ポスターといった多色刷りの印刷物では、版ズレや色のにじみが発生しないよう、プレステンションが正確に管理されます。
また、薄いフィルムを使用する食品パッケージや医薬品ラベルなどでは、フィルムが搬送中に歪むと印刷の精度に影響が出るため、プレステンションの精密な調整が求められます。このように、印刷物の仕上がりを安定させるために、プレステンションは印刷工程全体の品質管理において重要な役割を果たしています。
まとめ
プレステンションは、印刷機が用紙やフィルムを安定して搬送するための張力調整であり、印刷物の品質を保つための基礎的な工程です。適切なテンションを維持することで、印刷のずれやかすれを防ぎ、高精度な仕上がりが実現されます。
今後も、印刷機の技術進化やテンション制御システムの発展により、プレステンションの精度はさらに向上し、印刷物の品質向上に寄与することが期待されます。
